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第35話

 ランハートの匂い……  瑞々しい葉のような、ダージリンのような香り。  香水の香りだから、ランハートの香りじゃない。  けれど、これは紛れもなくランハートの香りだ。  ほのかに香るのは、俺だけが知るランハートの香り。  厚い胸板に頬を押し当てられて、ぎゅっと抱きしめられているから分かる。  心臓の音と一緒になって、トクトク伝わる…… (俺だけのランハート)  大好き…… (えっ?今、俺なにを思った?)  トクンッ  鼓動が跳ねた。  音は、  トクンッ  もう一つの音と重なった。 「ランハート?」  もしかして今の心臓の音はランハートなのか?

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