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第38話

 どうしよう……  どうしよう。どうしよう。どうしよう。  そんな事を言われたら、俺…… (ランハートを好きになってしまう!)  ちがう。たぶん、だって俺はもうランハートが好きだから。  もっと好きに……  この感情は、なに?  『愛している』  ……って事?  愛しているっていうのは、相手を思いやって、大切に思って、でも……  好きで好きで好きで、大好きで!!  ランハートの気持ちを俺だけのものにしたい。俺だけに向けたい。  だけど、それはランハートの心から自由を奪うという事になり、相手を尊重し大切に思う事からかけ離れている。  アァっ、もうっ。  分からなくなってきた。 「分からなくていいのですよ、勇者様」  ハッとして顔を上げた。 「私もよく分かりません。だって、私は人々の夢と希望を討ち滅ぼす魔王なのですから」  フッと木漏れた吐息はあたたかだった。 「だから私と一緒に探して下さいませんか。『愛する』という意味を」  きゅっ  ランハートの襟元を握った。  腕の中で抱きしめられている俺には、こうして動くのが精一杯。  大事なことを忘れていた。  大切なものは手放しちゃいけない。絶対に…… (これからも、この先も)  ずっと、ずっと、ずっと。 (ランハートと一緒にいたい)  ずっと、これからも…… 「ありがとう」  声は春風のように吹いた。 「これからも、共に歩んで下さい」 「それって、プロポーズ?」 「私はずっと、勇者様。あなたにプロポーズし続けていますよ」  一千年前の彼方から、ずっと、ずっと……  あなたに恋い焦がれていた。  トクンッ 「おや?鼓動が跳ね上がりましたね」 「言うなっ」 「どうして?」 「だって」 「だって?」 「……恥ずかしい」 「いけませんね、勇者様。あなたは私のものなのですから、隠し事はなりませんよ」  フフ……  返事のできない俺を軽く笑うから憎らしい。けれど許せてしまう俺ってば、もう…… 「私はあなたにゾッコンですよ」  俺よりも?  俺がランハートを好きな以上に、ランハートは俺が好き? 「うそ」 「夫を疑うなんて、いけない后ですね」  フゥ……と吐息は舞い降りた。 「私はあなたの夫ですから、あなたのお体も悦ばせたいと思っておりますよ」  ドキンッ 「おや、赤くなりましたが頷いては下さらないのですね。私のフェロモンが足りないのでしょうか」

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