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第5話 R18

 大学の講義を受けるために、大講義室の扉を開けて中へと入る。  今から受ける講義は一年前に単位が足りなくて再度履修し直しているものだ。一年から取れる講義なので人数が多く大講義室で毎回講義を行っている。  俺は単位を落としたからいつも連んでいる奴等はおらず一人で受けているのだが、今はそれが少しありがたく感じてしまう。  勃たなくなった俺の噂は俺のまわりで既に囁かれていて、冗談混じりにからかってくる奴もいるから、そういうのがないってだけで精神的には結構楽だ。  「佐久間先輩、ここ席空いてますよ!」  何度か話した事のある後輩の女子達がそう声をかけてきてくれるが、俺はニコリと笑っただけで他の席を探す。  …………、ありがたいけど今は少し女から距離を置きたい。  万全ではない自分が気安く女と絡むと、成り行きでそうなった時に気不味くなるのは自分だ。それは避けたい。  ほぼほぼ席が埋まっていて、誰かと席を空けずに座るしかない状況に心の中で溜め息を吐きながら、もうそれならばどこに座っても同じかと目についたところに腰を下ろす。  ガタタッ。  腰を下ろした途端に隣に座っている奴があからさまにビクついて席を揺らすので、チラリと見てしまう。  前髪が目にかかる長さで、野暮ったい眼鏡を掛けていかにも根暗です。みたいな風貌の男が肩をすぼめて座っている。  ……………、すいませんね。隣にこんな絡んだ事も無いようなチャラ男が座って。  と、思いながら鞄から筆記用具を出していると講師が入室してきて講義が始まる。  講師の助手が出欠の紙を配り、それに記入が済むと俺はスマホを取り出して昨日考えていた事を行動におこす。それは、あの女装した奴に連絡を取るという事だ。  連絡先は交換していたが、事が事だっただけにあちらからも当然連絡は無いし、俺からもだ。だが、俺がこうなってしまったからには何かしら文句の一つでも言ってやらないと気が済まない。  俺は相手に対してラインを打つ。  『オイ、覚えてるだろ?』  するとタイミング良く、隣の男のスマホが鳴って男がビクつくので俺は再度チラリと隣を盗み見るが、男はコソコソとスマホを取り出して何やら画面を見ている。  俺は再び自分のスマホを見詰めると、ラインに既読がついたので、返信があるかとしばらく待ってみるが一向に返信が無い。  既読になるって事は見ているはずだし、俺からってのも解っているのに良い度胸だな。と、俺は苛つきながらまたラインにメッセージを打つ。  『既読無視してんじゃね~』  『返信しろ』  『オイ、聞いてんのか?』  捲し上げるようにラインを送ってみる。すると数秒後にまた隣の奴のスマホが小さく鳴る事に違和感を覚えた俺は、自分のスマホに集中している素振りを見せて意識を隣の奴に向けると、コソコソとまた自分のスマホを見た途端、ラインに既読がついたので俺は賭けに出た。  『レイちゃん、俺隣に座ってんのにその態度は無くね?』  …………………………………。  ガタタッ!  ハイ、ビンゴ。  俺は隣の机の上にある出欠表をピラリと取り上げると、座っている奴はビクリと肩を揺らす。  俺は自分の出欠表とひとまとめにすると後ろに座っている女子にコソッと話しかけ  「ゴメン、これ一緒に提出しといてくんない?」  いきなり話しかけられた女子は驚いた表情で俺を見返しているが、コクリと頷いてくれたので  「あ、本当?ありがとう。助かる」  お礼を言って隣に座っている奴の耳元に口を近付け  「オイ、出るぞ」  そう言って机に出ている筆記用具や教科書を鞄の中に入れ込んでいくが、一向に動かない奴の態度にイラッとして再び口を寄せると  「この前の事、今この場で叫んでも良いんだけど?」  叫ぶワケが無い。叫んで恥ずかしいのは俺の方だが、相手も言われて欲しく無いのか俺の言葉を聞いてユックリと机に出していた物を鞄にしまい始める。  講義をしている講師と助手に気付かれないようにコソッとしながら後ろの扉から大講義室を出た俺は、俺の後から出てきた奴の手首を掴むとズンズンと歩き出した。  「ちょ、ちょっとッ!?」  どこに連れて行かれるのか不安気な声を出している相手を無視して、使われていない空き教室に入ると掴んでいた手首はそのままに、俺は相手の方に振り返って  「てかさ~、一緒の大学ってどゆこと?」  「…………ッ」  俺の問いかけに奴は無言で視線を合わせようとした俺から顔を背ける。俺はその態度にムッとして奴との距離を詰めると  「名前、何?」  「は、……え?」  先程とは違って、まさか名前を聞かれるとは思ってなかったのか、そう言われた奴は戸惑いながら俺の顔を見詰めるから、俺は奴の顔にある野暮ったい眼鏡を取り上げて  「本名だよ。レイちゃんって名前じゃ無いだろ?」  取り上げた眼鏡を自分の着ているTシャツの首元に引っ掛けて、もう一度同じ質問をしながら奴の顔をじっくり見る為少し首を傾げた俺に、相手はボソボソと何か呟く。  「あ?……何?」  前髪が邪魔で眼鏡を取り上げた方の手を、奴の前髪に伸ばしてグイッと掻き上げると、やはりあの時の綺麗な顔が目の前にある。  「あ……ッ」  「名前、何?」  前髪を掻き上げたと同時にキョロキョロと彷徨っていた目が、諦めたように一瞬下を向き再度俺と目を合わせる為に上がった時には、オドオドとした雰囲気は鳴りを潜め真っ直ぐに俺を捉えると  「黒川、嶺二」  -------ドクンッ。  女装がバレた後の普通の声音と一緒の声が奴の口から出た瞬間、俺の鼓動は何故か跳ねる。  「てか、いつまでも離さないつもりですか、先輩?」  次いでは憎たらしいほどに武尊な態度で掴まれている手首を持ち上げると、俺にそう言いながらニヤリと笑う。  「ッ……、お前……さっきと随分態度が違うじゃん……?」  言われて俺は奴の手首をブンッと離すと、離された手首を撫でながら  「大学ではあんまり目立ちたく無いんで……。で?何か用ですか?」  ため息混じりにそう尋ねられ、俺はカチンッとくると  「何かって……ッ、お前のせいでッ……」  「え~~?違うよ~……あ……」  ガラッと音を立てて教室の扉が開くと、見知らぬ女子達が俺達を見て固まっている。  「す、すみません……、次の講義の準備に……」  「…………ッ、ゴメンね。今出てくから……」  男二人、至近距離で気まずい雰囲気を出している俺達に、ソワソワしている女子に声をかけて俺は咄嗟に奴の手首を掴むと、教室を出て行く。そうして無言で人気の無い廊下を歩いていると  「もう良いでしょ?逃げようなんて思って無いし」  掴まれた手首を振り払うようにグイッと自分の方に振って、掴まれている手を振り解くと奴は俺に呟く。  「ハッ……、本当に逃げない保証は無いだろ?」  「あのさ~、逃げたのは先輩の方でしょ?俺、朝起きた時に一人で寂しかったな~」  「なッ……!」  あの日、俺はラブホのベッドで寝ている奴を置いて帰ったのは事実だが、それを責められる云われは無いはずだと奴を睨み付ける。  「そんな怖い顔で見ないで下さいよ。で、どこで話すつもりですか?」  「そんなの、どこでも……」  「は、無理ですよね?……………、俺ン家来ます?」  「は?………お前ン家って……」  「嫌ですか?別に取って食おうなんて思ってないですし、嫌なら先輩の家でもいいですけど?」  …………、こんな奴を俺の家には上げたくない……。  だが奴の提案に素直に応えて良いものか?とも疑問があって、俺は押し黙って相手を見詰める。  「はぁ……、じゃぁ話し出来ないんで俺、行きますけど?」  渋っている俺を置いて、足を踏み出そうとする奴の腕を咄嗟に摑んで  「わ、解ったよ!……、お前の家で、良い……」  モゴモゴと答える俺に、奴は少し笑うと  「こっち」  顎をしゃくって歩き出した奴の後を、俺は付いて行く。  「なぁ……、お前俺の事先輩って言ってるけど、後輩なの?」  先程からずっと気になっていた事を聞いてみると、奴は首だけこちらに振り返りながら  「そうだね、俺の方が一個下になるかな」  「なんで俺が先輩って知ってんだよ」  俺はこんな後輩、知らなかったぞ?  ジトッと相手を見ている俺に、奴はクスリと笑って  「あのさ~、先輩って結構大学で有名なの自覚無い?」  あ……、これは悪い噂の方で言ってるヤツだな。どうせチャラ男とかヤリチンとかって聞いてんだろ……。  相手の台詞に俺は顔をフイと反らすと  「ま、男冥利に尽きるんじゃ無いンすかね?」  良い風に言っているのか、馬鹿にして言ってるのか解らない答えに俺はどう反応を返すのが正解なのか解らず、黙ったままでいる。  だが、俺を知っていてあの所業。コイツ、俺に何か恨みがあるのか?と気になってしまい  「お前…………に、俺何か嫌な事、したことある?」  ボソボソと呟いた俺に、相手はキョトンとした顔を向けて  「は?どういう事?」  そう言ってきた奴の態度を見ると、そういう事は無いようだが……。  「イヤ……、嫌いだから俺にあんな事……したのかなって……」  嫌そうに言った俺の言葉を聞いて、奴は驚いたように目を見開き次いではプッと笑い出すと。  「イヤ……ッ、ハハッ。あ~~……、そっちでとった?」  笑いながら言っている台詞の意味が解らず、俺は眉間に皺を寄せるがそんな俺の表情を見て  「イヤイヤ、違うよ。俺は先輩の事知ってたけど別に嫌いとかで抱いてないし」  「なら……ッ」  どういう意味であんな事したんだよ。とまでは言えない俺に  「まぁ正直、先輩の事はタイプだったから抱いてみたいとは思ってたけど?」  「は?タ、タイプッ!?」  「そ~そ~、あん時は本当ラッキーって思ってただけで、お互い気持ち良かったんだから問題無いよね?」  …………、そ、そんな軽い感じで俺はコイツに抱かれたのか……。  復讐とか嫌がらせで無いって事は良かったケド……。理由が軽すぎるだろッ!!  相手の理由を聞いて押し黙った俺の顔をチラリと見て、奴は小さく溜め息を吐くと  「何が気に入らないの?先輩も同じ事沢山してるでしょ?」  奴の言葉に俺はハッとしてしまう。  それは、その通りだからだ。  俺がいつも女にしてた事。それがブーメランみたいに俺に降りかかってきただけ。まさか自分が相手の立場になるなんて思わなかったけど、俺にこういう扱いをされてた相手は今の俺のような心情だったのかな……。  それ以上俺は何も言えなくなって、ただ黙って奴の後を付いて行く。  しばらくお互い黙って歩いていたが、奴が不意に足を止め  「ここ、俺ン家」  言いながら顔を上げた先には、学生向けのマンションがある。  俺に一言そう言って、階段を上がっていく奴の後ろを俺も付いて行くと二階の角部屋で止まり、鞄の中から鍵を取り出してドアを開け  「どうぞ?」  と、俺を先に入らす為にドアを開けて待っている。  俺は無言で玄関に入り、靴を脱いで  「お邪魔します」  ボソッと呟きながら部屋へと上がると  「フハッ、先輩って本当意外だよね?」  笑いながら何が意外なのか解らなかった俺は、部屋に上がって奴を振り返り眉間に皺を寄せて突っ立っていると、俺の後から入ってきた奴がグイッと俺との距離を詰めて、俺が取り上げて自分のTシャツに引っ掛けてあった眼鏡を取ると  「これは返してもらおうかな」  「ッ……」  上目遣いでそう呟き俺から眼鏡を取り上げて、そのまま部屋の中へと入っていく。  「突っ立ってないでどうぞ?」  玄関を入ると広いフロアにキッチン、左手にトイレとバスルーム。右手にもう一つ扉があって奴はそちらに入って行く。俺も後からドアを入ると入って正面にベランダ、右側にマットレスだけのベッドがありその前に背の低いソファー、テーブルがあり左側にはデスクとその上にパソコン、デスクの隣は本棚で漫画や雑誌がある。  男の一人暮らしにしては綺麗に片付いている部屋の中を視線だけ動かしてキョロキョロとする俺に  「どうぞ、好きなところ座って下さい。何か飲みますか?」  と、声をかけながらキッチンの方に移動しようとする奴に  「コーヒー……」  「インスタントで我慢して下さいね」  そう言ってキッチンヘ行ってしまった奴の部屋のソファーに腰を落ち着かせる。  しばらくして二つのカップにコーヒーを入れて戻って来た奴は、テーブルにそれを置くと俺の横に腰を下ろし  「で、話って何すか?それともまだ文句?」  ズッと一口コーヒーを啜って俺に尋ねてくる。  俺はこの体になって少し戸惑う。  昨日からさっきまで、言いたい事をコイツに全部ぶちまけてやると意気込んでいたが、さっき嫌がらせとかで俺を抱いてないっていうのは解った。後は……。  フト冷静になってみればあの後から勃た無いなんて、そんな事を言ったところでどうなるものでも無いよな……と思っている自分がいるからだ。  …………、コイツに言っても問題解決にはならないよな……?てか、逆にからかわれるんじゃ…………。  頭の中でグルグルと思案して一向に何も言わない俺に、奴は大きく溜め息を吐くと  「先輩、何でここまで来たの?」  俺が何も言わない事に呆れるように言葉を投げかける奴を一度ジロリと睨み付け  「…………、~~~~~ッ」  ボソボソッと口の中で呟いた俺に、奴は少し苛つきながら俺の顔に自分の顔を近付けてくる。  「は、何?」  近付いた顔を避けるように上体を仰け反らした俺を逃さないように、奴は俺の腰に手を回してグイッと引き寄せ  「聞こえなかった、何て言った?」  仰け反った俺に近付くように更に距離を詰めてきた奴に、俺はワナワナと唇を震わせて  「~~~ッ、から、お前のせいでッた、勃たなくなったん……だよッ!」  叫ぶように言った俺に対して、奴はポカンと何秒間か固まったと思った次の瞬間には  「ハッ…………、アハッ、ハハハハッ」  何が面白いのか突然笑いだした奴に、俺は自分の顔が赤くなっていく感覚にチッと舌打ちを返して  「は、離せよッ」  腰に回された手を摑んで投げ捨てるように振り払おうとするが、逆にその手を掴まれてしまい  「え?……、本当に勃たないの?」  次いでは笑っていた顔からすぐに真剣な顔へと変えて聞いてくるから、俺はタジッと戸惑い  「そ、んな事……冗談で言えるかよ……」  ボソリと呟いた俺の台詞に、奴はしばしフ~ンと答えながら考える素振りを見せて  「一人の時は?」  俺の顔を覗き込むように尋ねてきた奴の顔が、思いの外近くにあってドキリとしてしまい俺はさっきみたいに顔を少し仰け反らせると  「は?……ッ、な、何が……?」  しどろもどろに答える俺に、相手は真剣な顔を変えないまま  「相手がいて勃たない?それとも一人でする時も?」  「……ッ、関係、無いだろッ……勃たないってだけで……」  「ウ~ン、その反応は一人の時もっぽいけど……」  「バッ……!」  「あ、図星?」  痛いところを突かれた俺は、恥ずかしさに顔を下へと向けてしまう。そうする事でそうだと答えてしまっているようなものだ。  奴は再度俺の腰に手を回して力を込め、先程よりも更にグイッと自分の方に俺を寄せると  「じゃ、見せてくれる?」  ニヤリと笑って俺の顔を覗き込むように言ってきた相手に俺は顔を上げて  「はッ?な、……何言って……ッ」  「イヤ、だってそれが本当かどうか解んないし?」  「お、お前ッ……俺が嘘ついてるって言うのかよッ」  「だ~か~ら~、それを確かめる為にも本当に勃たないか見せてって言ってんだけど?」  キスされそうなほどに近付いた奴の顔に手の平をバチンッとあてて  「ば、馬鹿じゃないのかッ!?何で俺がお前に……ッ」  なんて提案をしてくるんだと勢い良く顔にあてた俺の手を引っ剥がすように退けると、奴は  「痛ぇ~な……。てかさ、そんな事言ってるけど、俺は俺で先輩の事信用してないからね?」  「は、はぁッ!?」  「だってそうだろ?起きたら先輩居なくなってたし、あん時の金も俺が全額払ってるしさぁ~……」  ………………、そうなのだ。俺は動揺しまくった為、ラブホの金を払わずに帰ってしまっていた。その事はずっと気になっていたのは確かだが、そういう風にいちゃもんを付けてくるとは……。  「お前ッ……、俺の体好きにしといて……ッ、~~~~ッ金は払うッ!それで良いだろッ!」  だからお前の前でなんかしないぞ!と暗に匂わせているのに  「金の問題じゃねぇから。あ、やっぱ勃つのは勃つとか?」  「違うって、言ってんだろッ!」  「じゃぁ、証拠見せろ」  「ッ……」  突然言い方が変わって、覗き込んでくる表情も先程のものとは違う。俺がコイツを教室で追い詰めた時みたいな表情に変わって、コクリと喉が鳴る。  「見ないと解ん無いだろ」  言いながら俺から離れると、立ち上がり腕を掴まれる。  「な、何?」  「ベッド」  引っ張り上げられグイッと後ろのベッドへと連れて行かれブンッと腕を振られれば、反動で俺はベッドへと倒れ込む。  「ォワッ!」  倒れ込んだ俺の上に奴が覆い被さるように近付いてきたので、俺は態勢を起き上がらせて壁際へと素早く移動するが、その俺の前に奴は陣取ると  「ホラ、見せろ」  そう言って俺の履いているパンツに手をかけようとする。  「ちょ、ちょ、ちょ、ちょ、ちょッ……」  パンツのボタンとジッパーを下げようとしてくる手を、バシバシと叩いて離そうと掴むがビクともしない。  す、凄い力だッ、コイツッ!  「…………なぁ、ちょっと勃ってないか?」  ボタンとジッパーを下げられパンツの前をくつろがせている奴が、ボソリと耳元で囁く。  …………………、認めたく無いが、奴の言う通り俺のモノは少し芯を持ち始めていて、さっきから自分自身でもどうしてだと戸惑っていた。だってそうだろ?自分でしても何も反応が無かったのに、コイツに触られそうになって半勃ちしてるとか………。  「本当に勃たなかったのか?」  奴は俺のパンツを掴み勢い良くズルッと下にさげるとそのまま俺の脚からパンツを引き抜きペイッとその辺にパンツを投げる。そうして俺の両足を広げるとその中に自分の体を入れ込んで、更に俺に近付き  「触ったら完勃ちしそうだけど?」  スリリッと下から上へと撫で上げるように奴の指がボクサーの上から俺のモノに触れると、モノはピクピクと震える。  「ッ………ァ……」  それと同時に俺の口から小さな吐息が漏れると、奴は上半身を俺に寄せて耳元で  「イヤ、勃ってるだろコレ?」  楽しそうに耳元で囁く奴の声と体臭が匂って、俺はカァッと顔が赤くなるのと体の熱が下半身へと集中するのを感じてモジッと膝を合わせようとするが、コイツの体で合わせる事が出来ずに顔を下へと向けてしまう。  …………………ッ、クソッ、クソッ。本当に一人の時でも駄目だったのに、なんでコイツの時に反応するんだよッ!  容易く勃ち上がったモノが、俺と奴の間で主張している。俺はそれを隠そうと自分の手でモノを覆うように伸ばすが、すぐに奴の手に掴まれ  「出した方が良いな?」  「は、ぁ?……ッチョッ、え?」  スリリと俺のモノを撫でていた指が、形を確かめるようにギュッと握ってくる。  「イッ……オイッ、止め……ッ」  「止めて良いのか?久し振りなんだろう、気持ち良く出した方が良くないか?」  そりゃぁ、久し振りで気持ち良く出したいが、お前の前でじゃねぇッ!!  喉まで出かかっている言葉は、奴が俺のボクサーから俺のモノを出そうとしている行動に阻止され、俺は慌てて空いているもう片方の手を奴の手の上に置くと  「は、離せよッ!」  動揺してどもってしまった自分を少し恥ずかしく思うが、今はそれどころでは無い。  上に置いた手に力を入れて奴の手を退けようとしたが、反対にクルリと手を返されて俺は自分のモノに手をあてがう形になってしまう。しかも奴の手が俺の手の上に乗っかってるという最悪の状況で。  「あ、自分で触りたかった?気付かなくてゴメンな?」  「は?……ンなワケ……ッ」  「ホラ、動かしなよ」  俺の手の上からギュッと掴んだ手は、そのまま上下に動き出すから俺はボクサーの中で勃っている自分のモノを強制的に扱くようになる。  「ンァッ……」  文句を言いたかった唇は、久し振りの感覚に文句よりも甘い吐息が漏れてしまい、俺はギリッと歯を食いしばってしまう。  「気持ち良かったら素直に喘いだ方が気持ち良いだろ?」  そう言いながら奴がペロリと俺の唇を舐めるので、俺はびっくりしてアッと口を開けてしまう。その隙きを逃さずに奴の舌が俺の口腔内へと侵入してきて、縦横無尽に舌が動き出す。  「ンンッ……、んぅッ、ン、ンン~ッ……」  頬の内側を舐められ追い出そうとする俺の舌に自分の舌を絡めて、俺の舌が逃げようとすれば追いかけてきて絡め取られジュッと吸われる。何度かそんな事を繰り返すうちに俺の脳は気持ち良さに痺れるような感覚でボ~ッとし始めた頃に、俺の抵抗が無くなったと確信したのか歯列や上顎を舌で愛撫してくる。  「……ッ、ふぅん……、ンンッ」  頭がボ~とするのと同時に、握られていた手も気持ち良さに抵抗出来なくなって、奴が思うまま俺は勃起しているモノを扱いていると、鈴口からトロトロと溢れ出た先走りがボクサーにシミを作っていて……  「それ以上汚したら、穿いて帰れなくなるだろ?」  一度唇を離されて耳元で囁かれた直後に、コイツの手が俺の手を退けてボクサーを引き下ろす。  久し振りに勃起したモノは勢い良くブルンッとボクサーから飛び出すと腹に付きそうなくらいガチガチになっていて……。  「気持ち良かったな?まだ気持ち良くなろうな?」  優しく言いながら下げられたボクサーを再度下へとずらそうとしているが、俺の尻でずらせない。  「腰、上げろよ。もっと気持ち良くさせてやるから……」  体の力が抜けてクタッとしている俺がまだ抵抗して奴の邪魔をしていると思ったのか、少し苛ついた感じで囁かれるが、その台詞に俺が顔を上げて奴を見るとすぐにフニャッとした表情へと変わり。  「あ~~……、ホラ手ぇこっち回して」  俺の手を摑んでいたのをそのまま自分の首へと回しもう片方もそうすると、奴は俺の腰を片方の腕を回して支え俺の腰を上げてからボクサーを器用に脚の方へとずらす。  俺の脚を一旦自分の態勢をずらして軽く閉じさせるとそのままボクサーを脚から引き抜き、再び広げて元の態勢に戻し  「なぁ、あれからここ触ってみたりした?」  態勢が戻ると今度は直接奴の手で俺のモノを握られ、先走りで濡れていたモノをグチュグチュと音を立てながら愛撫されるが、それと同時に最奥の蕾をスリッと指先で撫でられ、俺はビクリッと体を震わせる。  「アッ!……、どこ、触って……ッ」  気持ち良さにされるがままだったが、そこを触られ俺は伸ばされた手を掴むと  「や、止めろッ」  蕾から手を離してギッと相手を睨むと、睨まれている本人はどこか楽しそうに  「止めても良いけど、一人の時の処理の仕方知ってた方が良いんじゃね?」  「は、はぁッ!?勃ったし……もう、問題ねぇだろ……ッ」  ……………ッ、俺も何流されてんだよッ!久し振りの人肌と触られる気持ち良さに脳がバグったか!?  「問題だったらどうすんの?処理の仕方知ってた方が良いと思うけど?もし勃たなくてもココ弄れば勃つしな?」  「えッ!?た、勃つのかッ?」  奴の言葉に踊らされるように俺は大きな声で反応してしまうが、すぐにハッと気付いて口をつぐむ。  俺の反応に奴はニコリと微笑んで、一旦俺から離れるとベッドヘッドの引き出しを開けてローションとゴムを取り出し  「やっぱ興味あるだろ?」  悪い顔で俺の頬にチュッと音を立ててキスをすると、ゴムをパッケージから取り出し自分の指に嵌めローションをその上から垂らす。  手慣れて素早い準備に見とれて、ワンテンポ反応が遅くなった俺に  「良いところ、しっかり覚えないとな。次は自分でやらなきゃだし?」  茶目っ気いっぱいに可愛く言われたが、奴の指はスリッと蕾を撫でると、慎重に俺の内壁へと入ってくる。  抵抗が無いと言えば嘘になるが、先程の「ココを弄れば勃つ」というパワーワードは、確実に俺の反応を鈍らせた。  それに認めたくは無いが……。正直に言ってしまえば、少しだけ興味はあったのだ。いくら女を抱いても反応したかった時に、後ろが疼く感覚が忘れられなくて何度か自分で触ろうとした。  結局は怖くて一人でする事は無かったが、あの日コイツに抱かれた時から確実に俺の体は変わってしまった。  「……、確かこの辺……」  「アッ……、と、待って……ッ」  入ってきた指が探るように俺の内壁を触っていて、俺はもう少しで与えられる快感にゾクリと背筋が震える感覚に、少しだけ待ってもらおうと指を伸ばした刹那  「アッ……ヒ……くぅ…ンッ」  先日教えられたばかりの自分の弱いか所を奴の指が撫でた途端、ビビビッとそこから広がる快感に声を上げてしまう。  「ン、ココだね」  探り当てた奴は嬉しそうに呟き、ユックリと俺と視線を合わせると  「ココだ、覚えた?」  中で撫でていた指を今度は上に押し付けるようにグッ、グッと叩いてから引っ掻くように指先を折り曲げる。  「ア゛ッ?……、カハッ……ア、ハァ……ッ」  「ン?引っ掻く方が好きっぽい?」  俺の反応を注意深く見詰めて、叩くよりもプックリと膨れた前立腺を引っ掻かれる方が良いと思ったのか、優しく執拗にソコをチロチロと指先で愛撫され、俺は堪らずに自分のモノを握ってしまう。  さっきから前立腺を弄られる度に、ピュッ、ピュックっと先走りが射精のように溢れ出て、恥ずかしさにいたたまれなくなった俺はギュッと自分のモノの根本を握って溢れ出ないようにするが、逆に奴には違って見えたようで……。  「アハッ、イキたい?ケド先にコッチ覚えようね?」  奴は俺が気持ち良さから自分のモノを扱いてイクのだと勘違いしたようで、俺にそう言いながら中に入れていた指をユックリと引き抜き、新しいゴムを破いて取り出すと何故か俺の指に嵌める。  そうして俺の指にローションを落としてから  「ホラ、ココだよ」  俺の指に自分の指を這わせて、誘導するように蕾にあてがう。  「えッ……、何ッ!?」  「だから、自分で覚えないと意味無いって言ったよな?」  「やッ……、だからって……」  「怖くね~から、ホラ」  自分の指を引いて触れないようにしても、上から覆い被さっている奴の手でグッと押され蕾に自分の指先が入っていく。  「ア……ッ、ァ……」  「そうそう、ゆっくり」  意外にも自分の指がスムーズに入っていってしまう事に動揺しながら、第二関節くらいまで収めると  「さっき俺が引っ掻いてたトコ覚えてるか?ゆっくりで良いから指、動かしてみな?」  優しく諭されるみたいに言われて、俺はゴクリと喉を鳴らすと、先程奴が中で弄っていたところを恐る恐る上にクイッと指を曲げて触ってみる。  「ッ、~~~~!」  「お、あった?」  前立腺を指がかすめ、俺は息を呑む。その反応に奴は俺の顔を覗き込むように顔を傾げるが、俺はそれよりもジンッとそこから広がる快感にモジッと両膝を合わせる為に脚を閉じようとするが  「オイ、駄目だろ」  片膝をグイと開かれて、俺の脚の間に再び奴が体を入れ込んでくる。  「ハ……ッ、ャ、ダ……」  「嫌だじゃねぇ、教えてやるんだから全部見せろ」  言いながら更に俺の指を奥へと入れようと指先に力を入れられ、俺の指は先程よりも奥へと入っていく。気持ちの良いか所はもう解っていて、俺は無意識に自分の指を曲げてしまうと、かすめるよりもダイレクトに指を押し付ける形になってしまい……  「ンウゥッ……、ア、くぅっ……ッ」  さっきよりも大きな波にのまれ、俺はビクビクと体を震わせてしまう。それを奴に見られていると思うと恥ずかしさに体を丸めて顔を下へ向けると、伸びてきた手が俺の顎を掴み上へとあげさせる。  「もう自分で出来て偉いな」  言いながら近付いてくる顔の速度に合わせてギュッと両目を瞑ると、唇にぬるついた感触。何度か舐められそのまま口の中へと舌が入ってくると、さっきされたみたいに縦横無尽に俺の口腔内を舌で愛撫してくる。  「ンンぅッ……フゥ……ン、ン、……ッ」  深い口付けに息苦しさを感じて、薄っすらと目を開ければ至近距離からジッと俺の顔を見ている奴と視線が絡む。  ずっと見られていたのだと認識してしまうと、ゾゾゾッと腰から這い上がってくる気持ち良さに握っていたモノからまたビュクリと先走りが漏れて、俺は再びキツく目を閉じてしまった。  そんな俺の変化を奴は見逃さずに、唇を俺から離し  「ハッ……、エロ……。手伝ってやるな?」  言いながら俺の頬に自分の頬をスリッと寄せ、片手を俺が握っているモノの上へと被せトロトロと先走りが溢れている亀頭を包み込む。  「ア゛ッ、止めッ……!」  すぐにでも達してしまいそうなのに、新たな刺激が加わり俺は喉を仰け反らせる。  「ホラ、コッチも動かして……」  覆われクチュ、クチュと亀頭を愛撫されている事に意識が持っていかれ、奥を弄る事が疎かになっていると、重ねている奴の指が催促するように俺の指を上からグッ、グッと動かす。  「クゥ……ッゥ、ア゛ッ、ダメ……だ……ダメ……ッ」  「ン~?駄目じゃ無いだろって……、ホラ、我慢しないで……、もうイク?」  奴が耳元で呟くように、もう限界は近い。   キツく握っている手を緩めてしまえば、簡単に達してしまいそうで……。ブルブルと太腿や腹が小刻みに痙攣する度に、内壁が自分の指を締めて勝手に良いところを押してしまう。  コイツの目の前で達してしまう恥ずかしさが勝り、言われた言葉に反応して俺は体を硬くして緩く首を左右に振ってしまうと小さく溜め息が聞こえて  「…………先輩、先輩の可愛くイクところ俺に見せてよ?」  「ア……ッ、ァ……」  さっきとは打って変わって甘い声音で俺の鼓膜を震わせる言い方に、耳から脳にかけて鳥肌が立つような感覚。  口に溜まった唾液が喘ぎと同時に唇の端からタラッと漏れるが、拭う事よりもこの快感をやり過ごしたい。  ハッ……、駄目だ。もぅ、次……ッ指を動かされたら……俺……。  上から押されている指をもう一度動かされたら、多分イッてしまうと自分でも解る。  頑なに自分のモノの根本を握っている俺に、奴は更に顔を近付けて俺の耳に舌を這わせるとユックリと俺の指に沿わして蕾の中へ自分の指を入れてきた。  「ヒィ……ッア、……ァ、ヤ……ッイ゛……グッ、イック……ッ」  「イケって……」  耳を舐められ、中へと入ってきた指に直接上から俺の指を押されイかないように加減して触っていたところを強く抉られれば  「アッッ!~~~~~ッ♡♡♡」  一瞬全身の力が抜けて、せき止めて握っていた指にも力が入らなくなった瞬間に、グッとつま先まで力が入って丸まると同時に俺は奴の手の平に勢い良く射精してしまう。  ビュク、ビュクと何度かに分かれて出している間にも、トントンと中の指が執拗に俺の指を叩いて前立腺を刺激するから、その度にビクンッ、ビクンッと体が跳ねて、ツッと漏れていた唾液が服を汚した。  大きな快感から開放された俺は、クタリと体中を弛緩させベッドの上でピクピクと気持ち良い余韻に包まれる。  イッた俺の唇に奴は音を立ててキスをすると、ペロリと俺の唾液を舌先ですくってから中に入れていた指をそっと引き抜き、次いでは俺の指もユックリと蕾から出すと  「はぁ……ッマジ、くっそ可愛……」  ボソボソと呟くと俺から離れてベッドヘッドの近くにあるティシュッを何枚か引き抜き、俺が汚してしまった手を拭っている。  俺はズルズルとベッドの上ヘ体を横たわせ、フト頭に浮かんだ疑問が口をついて出る。  「お前……、ゲイなの?」  男の俺にも躊躇無く触るし、手慣れている。  俺の問いかけに奴は一瞬動作を止めて俺を見下ろすが、次いではニコリと笑って  「嫌、違うけど」  と、答えるので俺は驚きに口をポカンと開けてしまう。そんな俺を見てフハッ。と小さく吐息を出した奴は、横たわっている俺の隣にバフッと体を投げ出して  「バイ、かな」  端的に答えた台詞に、俺はバイ……。と小さく繰り返すと  「なに、羨ましい?」  呟いた俺をからかうように言ってきた奴を睨み付けようと顔を横に向けると  「まぁ、二度美味しい思いはしてるけどな……」  なんて、言うから。  「……………オイ、やめとけそんな事言うの」  チャラい俺に言われても説得力が無いかも知れない。それかチャラい俺の前だから言えた台詞なのか……。  「イヤイヤイヤ、先輩が言うのかよそれを。てか、俺は先輩よりもマシだと思うけど?」  ………………。後者の方かと納得して、俺は眉間に皺を寄せると  「イヤ、お前も大概だぞ?」  俺よりも遊び慣れた感じ。そういう事に持っていくのが上手い。そう感じた俺の素直な感想を口に出せば  「イ~ヤ俺は先輩みたいに相手からビンタとか貰った事無いですし?」  「ッ……、お前ッ」  同じ大学だ。俺がセフレの彼女からビンタされてるところくらい見ていてもおかしくは無い。だがそれを今言わなくても……。  俺が横でブツブツと小さく文句を言っていると  「先輩さ~、しんどくなんない?」  不意にマジなトーンで俺に話しかけてくる奴の声音にえ?っと尋ねると、奴はよいしょ。と起き上がり再びティッシュを取って、ベッドの下に放っていた俺のボクサーやパンツを掴んで俺に近付き、出し切って萎えている俺のモノをティッシュで綺麗にするとボクサーを器用に履かせ、パンツは畳んでベッドの端に置く。  「何……、突然……」  奴の好きにさせながら聞かれた意味を考えるが、奴が何を言いたいのか解らずに少し探るように聞き返した。  「俺さ、前から結構先輩の事見てて……」  「ぇ?……、は、ぁ?」  それとしんどいがどう関係しているのか?俺は頭に沢山の?を浮かべながら奴の続きを待っている。すると  「先輩ってさ、いっつも人に囲まれてるけど全然楽しく無さそうだよね?」  「ッ……」  奴の台詞に俺はドキリとして言葉を失う。  何かすぐに返事を返せば上手く躱せたのかも知れないが、咄嗟に言葉を紡ぐ事が出来なかった俺は、苦笑いしながら奴から視線を反らすしかなかった。  「なんで無理してあのグループにいるのかずっと疑問だったんだよね、俺」  グイグイと土足で、俺の中ではデリケートなところを突いてくる奴に、上手い返しが見付からず黙っている俺に  「しかも先輩さぁ、ぶっちゃっけ遊び慣れて無いだろ?だから女からビンタなんて……」  「……系、無いだろ?」  「え?」  俺はユックリと横になっている態勢から、上半身を起こして壁に背中を付けて座ると、静かに奴に言葉を投げる。  奴は一瞬何を言われたのか解らないと俺に聞き返してくるが  「お前に、関係無いって言ってんだ」  強く拒否する言葉をあえて選んで、奴に言い放つ。一瞬俺からそんな事を言われるなんて思ってもみなかったのか、奴は驚いた表情を向けたが次いでは大きく溜め息を吐くと  「似合ってねぇって言ってんの、チャラ男演じたところで良い事無いって知っててなんで続けてんの?」  「だから……ッ」  お前に関係無い。って続く台詞は、奴の唇で言えなくなる。  「ンンぅ……ッ、ンッ!」  強引に奪われた唇を離せと、俺は奴の胸板を拳でドンッと叩くが反対に手首を掴まれる。そうしてユックリと離れた奴の表情は何故か痛さを我慢しているみたいな顔で……。  俺は想像していなかった表情に狼狽え、何も言えなくなってしまう。すると苦虫を噛んだみたいな声で  「自分騙して……良い事あった?」  「…………ッるさい、お前みたいに素から素材が良いワケじゃ無いんだよッ!」  コイツが俺に何がしたいのか解らずに、心の中で戸惑いながら文句を口にする。  「はぁ?今俺の外見の事なんか関係ある?」  「……ッ」  ドンッと俺の顔の横に奴の拳が勢い良く伸びてきて、俺は口をつぐむ。  コイツにしたら何を言ってんだってなるだろうが、俺には違う。自分の中の柔らかいところを掴まれ、暴かれる恐怖につい口に出してしまった台詞だ。  俺がこんな外見で、他人に時間もお金も費やさなくなったのは大学に入ってから……。  そう、いわゆる俺は大学デビューというやつで、高校までは本当に只々目立たない根暗のデブだった。  身長だけはあったから、コソコソと影で『関取』だとか『プロレスラー』だとか名前では無いあだ名で呼ばれていたのも知っていた。だけど、何も言えない性格で……。ヘラヘラと周りの目を気にしながら生活していたのだ。  だから素から素材が良い奴が羨ましくもあり、嫌いだ。大学に入ってそんな連中と親しくしているが、根本のところは苦手。それをコイツは見破いて……、今迄必死に隠して築き上げたモノを否定してくるから……。  何も言わずにただ睨み付けている俺を見下ろしていた奴は、ガクリと急に顔を下げてクソでかい溜め息を吐き出すと、呆れたような表情で顔を上げ  「……………、先輩明日暇?俺とデートしない?」  さっきまでの悪い空気を無視して、突然突拍子も無い事を言ってくる奴に、俺は一層眉間の皺を深くすると  「は、はぁあッ!?」  俺は、それ以外に出てくる言葉を失っていた。

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