「シンカンセンってやつ、初めて乗ったぜ」 　 　千紘が俺の元へやってきたのは、桜が一番綺麗な季節だった。死んだ姉の夫の親戚の子供を引き取った。理由は単純だ。もしも姉さんが生きていれば、きっと同じことをしただろうから。 　 　着の身着のまま遠路遥々連れてこられた子供は、初めて乗った新幹線にいまだ興奮しっぱなしで、自動車の助手席に押し込んで大人しくさせるのにも苦労した。 　 「すっげーはえーのなァ、シンカンセン。アンタの車も同じくらいはえー？」 「はえーじゃなくて、速い、だ。車はあんなにスピード出せない」 「出せねーってどーいうことだ？」 「そのままの意味だ。新幹線は速く走れるように作られてる。車はそうじゃない」 「へェ～？」 　 　見た目は十代の少年だが、言動が異様に幼い。手のかかるガキだ。せっかく締めてやったシートベルトを、邪魔がって外そうとする。 　 「やめろ。危ないだろ」 「なんでェ？ なんか首絞まってやだぜ」 「嫌でも締めとけ。安全のためだ」 「シンカンセンはこんなモンなかったぜ」 「新幹線より車の方が事故が多いんだ。シートベルトしてないと最悪死ぬぞ」 「……マジ？」 「大マジだ。フロントガラス……前の窓から、外に投げ出されたりするぞ」 「マジかよ～。オレまだ死にたくねェ」 「分かったら勝手に外すなよ」 「へーへー」 　 　手はかかるが、素直なところもあるのかもしれない。 　 「お前、名前は？」 「チヒロ」 「歳は」 「じゅーご？ たぶん」 　 　ハンドルを握る手が汗ばむ。 　 「中三か」 「ちゅー？」 「中学校何年生だ」 「ガッコーかァ、そーいや行ってねーな」 　 　手汗で滑って、ハンドルを切り損ねるところだった。 　 「アンタ、ガッコー行ってた？ 今何年？」 「学校は行ってたけどもう卒業した。それと、俺の名前は瀬川颯希だ。で、お前の名前は瀬川千紘。今すぐ覚えろ」 「はァ？ セガワ……？ って何だよ」 「俺とお前の名字だ。今日から一緒に住むから、そのための名前だ」 「フーン……？ よくわかんねーけど、オレとアンタ、一緒に住むのか」 「お前の歳は十五。誕生日は今日だ」 「フーン……はァ！？ たんじょーび、ってことは、オレ今日生まれたのォ！？」 「書類上そうなるってだけだ。でも、これから大事になるからな。覚えておけよ」 「へェ～……」 　 　事前に聞いていた話では、千紘の母親は付き合っていた彼氏を殺して自らも命を絶ったそうで、千紘は現場にふらりと現れたところを保護されたらしい。小さいが新聞記事にもなっている。 　 「な～、腹減ったァ」 「食いたいものあるか」 「えっ、え～、う～ん……ラーメン？」 「ラーメンなら何でもいいのか」 「お～、何でも食うぜ」 　 　コインパーキングに車を停めた。千紘がなかなか降りないから何かと思えば、シートベルトの外し方が分からないようで、どうにか潜り抜けようと四苦八苦している。 　 「この赤いところ押せば外れる」 「へァ？ あ、ほんとだ。へへ」 　 　くたびれた赤い暖簾をくぐって店内に入った。手書きのメニューが壁に貼られている、典型的な昔ながらの町中華だ。床は若干油っぽいが、味は確かだ。 　 　醤油ラーメンを二杯注文した。油の浮いた透明なスープにストレートの細麺、具材はチャーシューに煮卵、メンマとネギと青物という、かなりベーシックで間違いのない組み合わせだ。 　 　千紘は腹をぐうぐう鳴らしながら、顔と同じ大きさの丼ぶりを両手で抱えて、顔が埋まりそうなほどに凝視した。 　 「こッ、コレは……」 「食わないのか。伸びるぞ」 「置いとくと増えるし……じゃなくてよ～、コレ、オレの知ってるラーメンとちげーぜ。なんかすげーでけーし、いろいろのってるし、すっげーイイにおいすんぜ。んだこれェ」 　 　千紘は目を輝かせ、涎を垂らして舌なめずりをする。行儀が悪いからやめろ、と俺は一応窘める。 　 「これが普通のラーメンなんだ。お前が今まで食ってたのは、インスタントのラーメンだ。たぶん」 「はァ？ オレぁ今まで、ニセモノ食ってたんか？！ ニセモノでもうまかったぜ！」 「いや、インスタントが偽物とかじゃなくてだな……」 「いんすなんちゃらって何だよ！」 　 　千紘は、テーブルと椅子をガタガタ揺らしてぎゃいぎゃい騒ぐ。店員の視線が冷たい。 　 「いいから、とりあえず食え。伸びるとまずくなる」 「ヤダ！ 置いとくと増えるんだ！」 「増えるけどまずくなるんだ。分からねぇやつだな。足りなかったら替え玉させてやるから」 「んだそれ」 「麺のおかわり」 「おかわり？！ マジ！？」 「マジだ。だから大人しく食え」 「へっへへ！ やーったァ！」 　 　千紘は威勢よくレンゲを掴んだ。が、そこでまた動きが止まる。 　 「今度はどうした」 「これェ、オレがいつも使ってるやつとちげー。こんじゃメンが取れねー」 「……フォークがほしいのか」 「そーそ！ それ！」 　 　店員に頼んで、子供用のフォークをもらった。持ち手にクマのイラストが描かれている。 　 「ヨシ！ んじゃ、食うぜ」 　 　千紘は、小さい子供のようにフォークを鷲掴みにし、汁を飛ばしながら勢いよく麺を啜った。 　 「ゥ……ンめ～～ッ！！」 　 　一口目をほとんど噛まずに飲み込んで、次々と麺を掻き込んでいく。麺を掻き込むなんておかしな話だが、事実そうなのだ。スープがあちこち飛び散るのも顔面がドロドロに汚れるのも全く気にする素振りはなく、千紘はラーメンを貪り食った。 　 「すげェ、これェ……うンまい！ うッま！ なんかァ、なんかメンがすげーちゅるちゅるでェ、汁がすげーしょっぱくてアブラっこくてェ、すっげうめェ！ この、コレ、これ肉？ コレがチャーシューってやつなんかァ？ すンげーやっこくてしょっぱうめーッ！」 「もう少し静かに食えないのか」 「食えるかよォ！ こんなモン知っちまってェ、オレぁもう前みたいにゃあ戻れねー！ 毎日コレ食う！」 「毎日は無理だ。たまに連れてきてやる」 「マジでェ！？ アンタ、すげーイイ人だな！」 　 　ラーメン一杯で感謝されても困るし、境遇を思うと不憫になった。替え玉に加えて餃子を一皿頼んだら、「よくわかんねーけどうめェ！」と千紘はまた騒いでいた。 　 　＊ 　 　ようやくアパートに辿り着いた。駅からラーメン屋に寄って帰ってきただけなのに、どっと疲れた。 　 「お～、ここがアンタんちかァ。なーんもねーな」 　 　怒涛の一日を過ごして俺よりもずっと疲れているはずの千紘は、無意味にリビングを走り回ったり寝室のドアを開けたりトイレのドアを開けたりと忙しない。 　 「何もねぇことはねぇ。こういうのは片付いてるって言うんだ。おい、勝手に開けるな」 「なーよォ、今日からオレ、ここに住むんか？」 「そうだ。何か不満か」 「いつまで？」 「いつまでって……いつまでも？」 「フーン」 　 　千紘を迎えるために大急ぎで片付けたが、要らぬ心配だった。何しろ荷物らしい荷物がない。強いて言うなら今着ているものだけだ。その服だって、ほつれや汚れが目立つ、言ってしまえばボロである。サイズはオーバー気味で、袖も裾も捲っている。 　 「こっち来い。ちょっと早いけど風呂入れ」 「風呂ォ？ 汚れてねーし、昨日入ったからいいぜ」 「風呂は毎日入るんだ。いいから脱げ」 　 　オーバーサイズのジャンパーを脱がすと、下はくたびれた白いTシャツだった。シャツを脱がすと、憐れになるほどの貧相な体が露わになる。 　 　筋肉もなければ脂肪の欠片もない、骨と皮ばかりの痩せ細った体。あばらや腰骨がくっきりと浮き出て、鶏ガラのような体とはこのことを言うのだな、とつまらないことを思った。 　 「……これはもう捨てるからな」 「えッ！？ ヤダ！ 他に着るモン持ってねー！」 「俺の貸してやる。新しいのも買ってやる」 「へェ～？ なら、いっかァ」 「後は自分で脱げるな？ そこのカゴに入れとけよ」 「へーい」 　 　脱衣所のドアを閉め、俺は溜め息を吐く。今日からこの、問題だらけの変なガキと二人暮らしか。自分で言い出したこととはいえ、やっていけるのだろうか。俺に子育てが務まるだろうか。姉さんは偉大だった。 　 「なーなーなー！ おい！ なァ！」 　 　風呂場から興奮したような声が響いた。と思うと、素っ裸のままで千紘が駆けてくる。 　 「バカ、そんな恰好で出てくんな」 「なァな、風呂ってよォ～、あのでっけー入れモンが風呂なんか？！ あったけー水がいーッぱい入ってたけどよォ～、あれに入れって、アンタが言ったのってそゆこと？！」 「そうだ！ あのでっけぇ入れ物が風呂なんだ。それより裸でうろつくんじゃねぇ！ さっさと戻れ！」 「えへェ～、えッへへ、あれが風呂かァ」 「変な笑い方してんじゃねぇ。風邪引くぞ」 　 　千紘の骨張った手首を掴んで、もう一度風呂場に放り込む。 　 「いいか、よくあったまってから出てこい。体もちゃんと洗えよ」 「おーッ、もちろんだぜ！」 　 　言うが早いか、千紘はバスタブに飛び込んだ。大きく水柱が立ち、俺の頭に降り注ぐ。服も脱いでいなければ腕時計も着けたままだというのに。前髪からぽたぽたと雫が落ちる。 　 「……おい」 「あちッ、あっつ、あっははッ、あッちィ～～！」 　 　千紘は、湯船に沈んでバシャバシャ暴れる。溺れる子供みたいに、四肢を激しく振り回して暴れる。水面が大きく波を打ち、大量の水飛沫が勢いよく飛び散る。 　 「やっべェこれェ、あッつぅ～～！ でもキモチー！ 風呂、サイコーだな！」 「……おい。おい、落ち着け」 「んだよォ～、アンタも入んのかァ？ 入った方がいいぜ～、こんなキモチーモン、知らなきゃ損だぜ」 「分かった、分かったから暴れるな。風呂が壊れる」 「え～？ 壊れんのォ、これェ？」 「壊れる」 　 　俺は、頭を抱えて溜め息を漏らした。土砂降りの中を走ってきたみたいに、頭のてっぺんから全身ずぶ濡れだ。こうなったらもう、どこまで濡れても同じことかもしれない。腕時計を外し、ベルトを外し、ズボンの裾を捲って、腕捲りをした。 　 「こっち来い」 　 　椅子を叩いて千紘を呼ぶ。 　 「へェ？」 「洗ってやる」 　 　千紘の薄汚れた髪をシャワーで濡らし、シャンプーをつけて泡立てる。が、なかなか泡立たない。髪の毛同士がこんがらがっていて、指に絡んで洗いにくい。 　 「あークソ。お前いつから風呂入ってないんだ」 「だァから、昨日入ったって」 「ちゃんと洗ったのか」 「え～？ まァ、フツーに……ッてて、いでェ！ 引っ張んな！」 「ちょっとくらい我慢しろ。クソ、全然取れねぇ……」 　 　まるで、引き出しの底に仕舞い忘れたネックレスみたいだった。かなり手間取り、ようやく指通りがよくなってきたところで、頭の洗い方というのを千紘に教える。 　 「黒い入れ物が頭用だからな。明日からは自分で洗えよ」 「へーい」 　 　髪を流したら、次は体の洗い方を教える。スポンジを泡立てて背中をゴシゴシ擦ると、あっという間に泡が茶色く濁った。ドブ色ではないからまだマシかもしれないが、思った以上に汚れている。 　 　一旦シャワーで流し、もう一度新しい泡で背中を擦った。千紘は、ヒャヒャヒャと変な声を上げて笑う。 　 「おい暴れるな。静かにしてろ」 「だってよォ～、イヒヒ、くすぐって、くすぐってーんだもんッ、あは、いひひ」 「明日からは自分でやるんだから、ちゃんと見て覚えろよ」 「でもよ～、今日こんだけ洗ってんだし、しばらく風呂はよくねー？」 「駄目だ。毎日洗え」 「ケチ～～」 　 　腕を持ち上げて腋を洗う。まだ毛は生えていないらしい。腋から脇腹へ移り、体を引っくり返し、抉られたように凹んだ腹と、薄い胸を洗う。スポンジ越しにも骨の凸凹した感触が伝わってきて、ぞっとした。 　 「な～、アンタ、いい人？」 「俺は普通だ。こっち向いて立て」 「フツーって何だよ」 　 　千紘を立たせて、脚を洗う。股間も洗うべきかと思いながら、シャワーで流すだけにしてお茶を濁した。 　 「だってよ～、ホンモノのラーメンもチャーシューも、ギョーザ？ ってやつも、オレぁ今日初めて食ったぜ。アンタが食わしてくれたんだ。いい人なんだろ？」 「それくらい普通だ」 「だァから、フツーって何なんだよ」 「普通は普通だ。向こう向け」 　 　ゆっくりとシャワーをかけ、全身の泡を洗い流す。髪の毛と絡まりながら、白い泡が排水口に吸い込まれていく。 　 「それによ～、誰かと風呂入ったのだって……まァ、初めてではねーと思うけどよ」 「お前な、あんまり簡単に他人を信用するな。悪い大人に引っ掛かって痛い目に遭うぞ」 「んェ～？ じゃーアンタ、悪い大人なん？」 「だから、俺は普通だって言ってるだろ。飯食わせたり風呂入れたりするのは、保護者なら当然のことなんだよ」 「ホゴシャ？」 「父親みたいなもんだ」 「父親ァ！？」 「そう思えないなら兄貴でもいい」 「アニキィ！？ ……ならまァ、いいかもな」 「とにかく、俺がお前に飯食わせたり風呂入れたりするからって、俺がいい人間だって理由にはならない。分かったらさっさと肩までお湯に浸かれ。百数えるまで出てくるなよ」 　 　俺はシャワーの蛇口を締めた。 　 　＊ 　 　浴室のドアの開く音がする。百数えるよりも随分長かったが、千紘がようやく風呂を上がったらしい。フンフフーン、と機嫌よく鼻歌を歌いながら、びしょ濡れのままでリビングに現れた。 　 　一応タオルを被ってはいるが、全然拭けていない。髪の毛先や指先から、ぼたぼたと水が滴る。廊下にも濡れた足跡が続いている。 　 「バッッカ、戻れ！」 「はァ～？ ンだよ、もーあっちィから風呂はいいんだけど」 「そうじゃねぇ！ 濡れたまま出てくんな！」 「へェ～？」 　 　俺は千紘を脱衣所まで連れ戻した。廊下も濡れていたが、脱衣所は水浸しだった。床はもちろん、戸棚や洗濯カゴ、洗面台の鏡にまで飛沫が飛んでいる。 　 「お前……」 「おァ～？ まーでもすぐ乾くっしょ」 「そういう問題じゃねぇ……いや、お前はまず体を拭け。そこのバスマットの上で拭くんだ。ちゃんと拭けるまでそこから一歩も動くなよ」 「え～、こんなせめーとこでェ？」 「文句言うな。濡れたままだと風邪引くぞ。ったく……」 　 　文句を言いたいのはこっちの方だが、文句を言ったところで仕方がない。床に這いつくばって雑巾を掛ける。 　 「な～、なんで濡らすとダメなんだァ？」 「そりゃお前、カビたり腐ったりするからだ。あと、濡れた床を踏むと気持ち悪い」 「じゃ～、裸はなんでダメなん？」 「そりゃあ……普通そうだろ。お前、羞恥心がないのか」 「しゅーち？」 「裸見られて恥ずかしいとか思わないのか」 「思わねーな～」 「そうか……」 　 　普通、この年頃の男子ならそういうことに一層敏感になりそうなものだが、千紘が何も思わないなら仕方ない。 　 「裸でうろうろされると俺が困るんだ。だからこれからはやめろ」 「へーへー。だったらよォ～、オレ着るモンねーんだけど」 　 　下着も部屋着も俺のものを着せた。下着のお古を着せるのは何となく嫌で、新品を下ろした。 　 　部屋着は、俺が普段から使っているスウェットを着せたがサイズが合わず、袖も裾も胴回りも肩幅も全てが余った。特にウエストがあまりに緩くてずり落ちてしまうので、応急措置としてクリップで留めた。 　 「ッへへェ～、やーった！ あたらしー服！ 新しい服～！」 　 　サイズの合わないお下がりの部屋着なんかで喜ばれても困る。 　 「新しい服は明日買いに行く。そんなぶかぶかじゃ駄目だ」 「え～～？ いいぜェ、これで！ なんかいいにおいすっし！ キレーな感じのにおいだ！」 「昨日洗ったからだろ……。次、髪乾かすぞ」 　 　千紘を洗面台の前に立たせてドライヤーを握った。乾かしてみて分かったが、千紘の髪はふわふわの綿毛みたいで、ミルクティーのような透明感のある色をしていた。しっかり乾かしてブラシで梳かすと、見違えるように綺麗になった。 　 　昼間会った時は相当汚れた状態だったことに、今初めて気が付いた。千紘も同じことを思ったようで、食い入るように鏡を見つめている。 　 「……なんか、さァ、オレさァ……」 「ああ」 「なんか、オレ、これ…………すッッッげェかっこよくなってね！？」 「……はぁ？」 　 　空気と共に変な声が漏れた。千紘は大興奮で鏡に齧り付く。 　 「やッば！ えッ？！ コレがオレ？！ オレってこんなイケメンだったん？！ やっばァ～～！ こりゃあモテるな！ モテモテだな！ モテちまうなァ～～ッ！」 　 　落ち込んだかと思いきや、ポジティブ思考が突き抜けている。ネガティブよりは扱いやすいが、俺にはまだ千紘のことが全然分からない。 　 「すっげェオレ！ オレかっけェ～～！」 「あっ、おい！ 鏡にベタベタ触んな！」 「なァ！ アンタもそー思うか？！ オレかっけーか？ モテそーか！？」 「はぁ！？ あーまぁいいんじゃないのか！ 気が済んだならあっち戻ってろ！」 「へッへへ、やーったァ！ これがオレのォ、真の姿だァ！！」 「大人しくテレビでも見てろ！ 台所は触んなよ！」 　 　全く、嵐のようなやつだ。リビングに戻ってもしばらく騒ぎ声が響いていた。 　 　 　俺は急いで風呂を上がった。俺のいない間にイタズラでもされていたら、火遊びでもしていたらと思うと気が気でなかった。 　 　しかし杞憂だったらしい。テレビは大音量でつけっぱなしだったが、千紘はカーペットで静かに眠っていた。座布団を、なぜか丸めて抱きしめていた。 　 　眠っていると、元々幼い顔付きがより一層幼く見える。その寝顔がこいつの過去を物語っているようで、俺は複雑な気持ちになった。今日から俺がこいつの親代わりだ。不安は募るが――不安しかないが――できるだけのことはやろうと思っている。 　 　テレビを消し、眠る千紘を抱き上げた。想像以上に軽くてぞっとする。これからはまずちゃんとした食事をさせなければならないなと思った。今日大急ぎで買ってきた布団に千紘を寝かせ、俺もベッドに入った。