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第4話
「あ゛ー…、ガチでしあわせ…」
三条の上に乗り、呼吸も三条の周りの空気から得る。
ふわふわ香る清潔なにおいも、こんなに濃いのは久し振りだ。
マスクも距離も必要押しないことがこんなにしあわせだなんて。
新しい常識に慣れて過ぎている。
改めて、そのしあわせを噛み締める。
「正宗さん」
「ん?
重いか?」
「いえ。
重くはないです。
けど…」
少しだけ身体を離すと、三条は肩を押してきた。
一体どうしたのか。
ぐいぐいと肩だけを押され、体制が反転する。
素直に床にケツをつけば、その上に三条が跨がった。
「…し、つれいします」
「お、良い眺め」
「……もっと、すごいことするんですから」
「すごいこと?」
赤い顔をコクンと上下させると、ゆっくりと顔が近付いてきた。
そして、ちゅっと唇が触れる。
やわらかくて、あったかくて、それでいて初々しい。
押し付けるだけのキスは三条のキスだ。
「さいこー」
「まだです…」
今度は唇を触れ合わせる瞬間、軽く食んだ。
こんなのニヤけてしまう。
「もっと…」
「ん」
肩に触れる手をとり、指を絡めて握り締める。
少女漫画も目じゃない甘さだ。
だけど、1番甘いのは空気でも行為でもなく遥登。
「正宗さん、好きです」
キスの最中に伝えられる言葉は、その証拠だ。
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