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第12話

朝からご機嫌になる綾登は抱っこされたまま母親にも挨拶をする。 洗面所から戻ってくる父親にも挨拶をし、かわるように洗面所へ。 「綾登、顔洗おう」 「うんっ」 おろそうとすると、なぜかしがみついてくる。 「だっこがいーい」 「うーん…」 初日だからこそワイシャツを汚したくないが、ひしっと抱き付く弟はすごく可愛い。 暫くはこうして甘やかせない。 色々と考え、汚れたら着替えたら良いと至極簡単な答えを出す。 「分かった。 抱っこしてるから、顔洗いな」 「うんっ」 元気な返事と共に、抱かれながら器用に顔を洗いうがいをする綾登。 こんなところを次男に見られたら、赤ちゃん、と言われるのだろう。 いくつになっても末っ子は可愛い赤ちゃんのままだ。 「たおるぅ」 「ん? あぁ、ごめん。 はい」 「ありあと!」 グリグリと顔をタオルで拭うと、今度は食卓を目指す。 今日くらい良いか。 子供用の椅子に綾登を座らせ、そのままご飯の支度。 自分のと三男のお茶碗にご飯をよそう。 「遥登、お弁当。 お昼ご飯いるでしょ」 「ありがとう」 「おかずは使い捨て容器だから帰ったら捨ててね。 ご飯はおにぎりにしてあるよ」 「助かる…」 母親の作ってくれるお弁当を食べるのは久し振りだ。 毎日の食事で食べてはいるが、お弁当は3回生の時の教育実習ぶり。 おかずがなにかワクワクする。 「はう、おべーと?」 「うん。 お弁当。 綾登は給食だもんな」 「うんっ! おいしーよ!」 「朝ご飯も美味しいから、沢山食べような」 「うんっ! いたあきます!」

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