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第14話
朝ご飯を食べ終え、歯磨きをする。
ささっと髪の毛をセットすると三条も炬燵に足を入れた。
余裕のあるように、と早起きしたが結果としてゆとりが出来た。
こんなことならもう少し眠れたななんて思わなくもないが、まぁ良いか。
足の上に座る綾登と一緒に教育テレビを眺める。
「美月ちゃん、いってきます」
「いってらっしゃい。
気を付けてね」
「遥登、遥登らしくな」
「うん。
ありがとう。
父さんも気を付けてね」
巣立ちの日でもあっさりしていてくれる。
後生の別れではない。
週末に帰ってくることも多々あるだろう。
なら、そんなものだろう。
ヒラヒラ手を振ると、隣に座る綾登も見送り手を振る。
「俺もそろそろ行こうかな」
「ゆーと、おきて」
「起きてる…」
「優登、俺も行くよ」
「兄ちゃん」
手を捕まれたかと思うと、ぎゅっと力が入った。
産まれた時から兄という自分がいる優登。
その生活しか知らないんだ。
その感覚は、俺には一生理解してやれない。
寂しいのか、不安なのか。
それとも、置いていかれる感覚なのか。
分からないけど、頭を撫でた。
それしかしてやれないから。
「…ちゃんと帰ってこいよ」
「帰ってくるよ。
俺の家だもん。
優登も部屋に来いよ」
「…ん」
のそりと顔を上げるが、どこかしょぼくれている。
けど、立ち上がると背中をグイグイと押し出した。
素直じゃない弟もやっぱり可愛い。
「お菓子作ったら持ってく」
「楽しみにしてる」
「いってらっしゃい」
「いってらっしゃい」
「遥登、気を付けてね」
「うん。
いってきます」
履き慣れない革靴、鞄を持って玄関を出た。
生憎の曇り空だが、そんなのは関係ない。
振り返れば家族が手を振ってくれているから。
いつでも自分を甘やかしてくれる家に背を向け歩き出す。
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