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第15話

準備室の鍵を開ける横顔に急いで駆けていった。 足音に気が付いた“先輩教師”は顔を上げてくれる。 まずは、挨拶。 「おはようございます。 本日よりお世話になります、三條遙登です。 沢山ご迷惑おかけすると思いますが、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願い致します…っ」 そう言って頭を下げれば、目の前の教師は小さく吹き出した。 「おはようございます。 こちらこそ、よろしくお願いします。 “三条先生”」 今日も憧れはキラキラ輝いている。 こんなに近くなっても、その美しさはなにもかわりはしない。 「さ、入ってください。 色々教えますよ」 背の高い後ろ姿に続いて準備室に入るとコツッと手がぶつかった。 「寒いから暖房つけますね。 電源はここです」 「はい」 コートを羽織ったままの先輩教諭は丁寧に教えてくれる。 すぐにジャケットのポケットからメモ帳を取り出すとボールペンと共に構える。 「それから、ポットの中の水捨てて補充。 ポットの洗浄はたまにしてるので安心してください」 「はい」 「あと、」 「はい」 その人は少しだけ身を屈め、耳元に唇を寄せた。 「スーツ似合ってる」 「え…、と…ありがとうございます…」 一瞬だけ覗かせた仮面の奥の顔に、胸がドキドキと騒ぐ。

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