17 / 59

第17話

朝から何度も自己紹介を繰り返した。 教科準備室、国語科担当者たち、職員室、事務室。 これだけ多く名前を言っているとなんだか不思議な気持ちになってくる。 一通りの挨拶を済ませ、準備室へと戻ってくると、先輩たちがにこやかに迎え入れてくれた。 まだ準備室が落ち着くとは思えないが、ここは安心出来る。 そんな気がする。 「只今戻りました」 「お疲れ様です」 「沢山話して疲れたでしょう。 コーヒーありますよ」 と、言われてもカップがない。 水筒にお茶を入れてきたので、そちらを飲めば良いかと自己完結する。 だが、感謝は伝えなければ。 「ありがとうございます」 「カップもありますよ。 僕たちからのプレゼントです」 「え…」 五十嵐は、ジャーン!ともでも言いそうな顔で箱を手渡してきた。 「開けてみてください」 「ありがとうございます。 では、失礼します…」 包装を丁寧に剥いでいると、パソコンに向かっていた長岡も一段落したのかクルリと此方を向いた。 みんなに見守られながら、箱を開けるとシンプルなマグカップが1つ。 それとインスタントのコーヒーの詰め合わせが入っていた。 「わ…」 「その顔の方が似合ってますよ」 聞きなれた声は、さも当然だとばかりに言った。 そちらを見れば、長岡は微笑む。 五十嵐も古津も。 「…そんなだらしない顔をしても…良いのでしょうか…」 「だらしないって…。 みんな長岡先生の机で知ってますから、気にしなくて良いと思いますよ」 「写真で見てますから」 「…はい」 お世辞抜きでふにゃ…と笑うと先輩たちは頷いてくれる。 やっぱりここの空間は安心出来る気がする。

ともだちにシェアしよう!