19 / 59
第19話
「切断機はこれです。
手、巻き込まないように気を付けて下さい。
こうしてセットして、こうします」
ものすごくアナログな裁断機は、大きな歯が剥き出しだ。
そこに印刷したプリントをセットすると、長岡は包丁で切るように歯を下ろす。
ザクッと切り分けられ、クラス分のプリントが出来上がった。
「ゴミはここ。
シュレッダーはここです。
いっぱいになったらここを開けて出して、ここにある袋をセットしてください。
出したゴミはゴミの日まで端に置いておいてください」
「はい」
「他に質問はありますか」
「大丈夫です」
じっと出来上がったプリントを見ていると、長岡は更に続けた。
「トイレは大丈夫ですか」
「大丈夫です」
「なら、事務室に寄ってから準備室に戻りましょうか」
「はい」
コピーも裁断もやることは簡単だ。
忘れることはないだろう。
それより、沢山の人が使う場所ではマナーなルールが大切だ。
シュレッダーのゴミの確認はこまめにするように意識しなければ。
「あ、昼飯ってどうしますか?
弁当購入するなら決まった時間までに注文するんです」
「お弁当を持ってきました」
「言うの忘れたな。
悪い」
「いえ、大丈夫です」
長岡が事務的なことを忘れるなんて珍しい。
そう思い顔を見れば、ほんの少しだけやわらかく目を細めていた。
「?」
「いや、事務室に行きましょうか」
サッと仮面をつけると、ドアを開け廊下へと出る。
本当に長岡の切り替えは一瞬だ。
ともだちにシェアしよう!

