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第26話
サラサラした髪が頬に触れるのがしあわせだ。
背中に回る手がぎゅっと自分を抱き締めるのもたまらなく愛おしい。
仕事終わりの遥登は最高のご褒美だ。
「あー、遥登触り放題…」
「おじさんみたいです…」
「学校で触れねぇだろ。
ケツとか」
身体を離し、改めて三条を見る。
さっきまで学校で見ていた姿となんらかわりはない。
スーツが私服になり、顔のゆるゆるが戻っただけ。
なのに、自分の恋人感がグッと増している。
独占欲のせいだろうか。
それとも学校という舞台が清らかさを増させるのか。
どちらにしても好きだと思うのは強固なものだ。
「どうかしましたか?」
「いや。
なんかあったかいの飲むか。
ほら、入れよ」
「お邪魔します」
「お邪魔じゃねぇだろ」
「…えっと、失礼します」
「ま、伸び代か」
もっと自宅のように振る舞ってくれて構わないが、焦ることもない。
勝手知ったる慣れた部屋なのにはかわりないのだから。
「なに飲む?」
「正宗さんの同じのが良いです」
「かわんねぇな」
「?」
「あ、今日の晩飯は期待しとけ」
漸く恋人の時間だ。
しこたま甘やかしてやる。
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