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第27話
コーヒーと思ったが、三条ははじめての仕事で頭が興奮しているかもしれない。
人の顔色を伺い、人の考えの先回りをし、きちんと仕事をこなす。
三条らしい美徳だが、初日からそれでは疲れているだろう。
そうでなくとも頭をフル回転させている子だ。
実家に寄った時に母親からもらったお茶を取り出す。
台湾烏龍茶のティーパック。
それをマグに入れると、お湯を注ぐ。
立ち込める香りは少し甘くて芳醇だ。
「良いにおい。
お茶ですか?」
「あぁ。
母親からもらったんだよ」
「紅茶…じゃないですね?
けど、綺麗な色です」
「烏龍茶だってよ」
手洗いを済ませ、タオルで拭いている三条はにこにこと隣に並んだ。
甘い蜜香が辺りを彩る。
にこにことお茶を見下ろしている三条はマスクをつけていない。
会う時はいつもつけていたのに。
それがなんだか嬉しくて、つられて頬が緩んでしまう。
「どうしたんですか?」
「んー、触りたくなった」
手を絡めとっても三条はにこにこするばかり。
「奇遇ですね。
俺も触りたいなって思ってました」
「なら」
ちゅっと唇を触れ合わせれば、その笑顔は増すばかり。
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