34 / 59
第34話
炊けた米に砂糖と塩、酢をかけていく。
「酸っぱいご飯ですか?
あ…」
「酸っぱいご飯ですよ」
弟と話す時の癖なのだろう。
なんとも言えない顔をしてるのも含めて好きだと思う気持ちが込み上げるだけなので気にすることはない。
ただ、つい、笑いを殺しきれないだけ。
可愛いからな。
それに、どれだけ弟を大切にしているかが伝わってきて、兄らしい1面を見ることが出来るのも嬉しい。
「手巻きと丼、どっちが良い?」
「うーん……」
眉間の間に皺を寄せて悩む姿は中々見ることの出来ない珍しいものだ。
しゃもじで米をきるように混ぜながらその顔を眺める。
「両方食うか。
別に丼にしたかったら茶碗で食えば良いんだしな」
「そんなに甘やかして良いんですか…」
「良いだろ。
今日は甘やかすって言ってんだしな。
それに、俺が楽しいし」
「ありがとうございます」
ふにゃっと笑う恋人の手をとり、味見に酢飯を少し手のひらに置いた。
「味見。
もう少し酸っぱい方が良いか?」
「いただきます。
…美味しいです!
酢もちょうど良いです」
もぐもぐとしっかり噛みながらそれだけ伝えると、にこにこした顔のまま食べている。
いつまでもかわらない姿がこんなに愛おしい。
もう一口分手のひらに米をのせると、にこーっと笑うから困る。
まだ飯の前だというのにしこたま食わせたくなる。
「美味しいですっ」
「そういう顔してる。
んじゃ、味噌汁覚める前に食うか」
「はいっ!
楽しみですっ」
ともだちにシェアしよう!

