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第36話
食べ終わった食器を洗うのも片付けるのも当然のことのように手伝ってくれる。
本当にどうやったらこんな良い子が育つんだ。
手の出し方を間違えたなと思うばかりだ。
最後の茶碗をすすぎ終わるとタオルへと手を伸ばす。
流石にボトムスで手を拭くのは恋人に笑われてしまう。
「終わり。
ありがとな」
「いえ。
俺の方こそ、ありがとうございます。
ご飯、美味しかったです」
「飯だけ?」
「え…?」
クリッとした目がきょとんととしたかと思うと、すぐに耳が真っ赤になっていく。
「………キ、スも」
「キスも美味かったか。
遥登も男だな」
「男ですよ…。
見てるじゃないですか」
「んー?
ナニを?」
身体をくっつけ、体重をかけるように押せば三条はしっかりと受け止めようと身体に力が入る。
しっかりした男のものだ。
あの日、教室でうけた抵抗とは違う。
嬉しくて、少しだけ寂しい。
けど、やっぱり嬉しい。
「風呂いって確認するか」
「えっ」
「ナニを確認するかは分かんねぇけど」
「またからかって…」
困ったように、だけど嬉しそうな顔に日常の特別を堪能する。
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