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第37話
タオルを被ったまま脱衣所を出た。
三条にはしっかり乾かせと言うくせにだ。
ま、自分のことなんかはこんなもんだ。
適当に生きていても死にはしない。
だが、視界に三条の姿がない。
いつまならば、ふにゃっとした顔が出迎えてくれるのに。
「遥登?」
盛り上がったブランケットの中には、丸くなって寝ている三条。
寝てんのか
疲れたよな
1日中誰かに気を遣い、あちこちに挨拶をし、気を張っていた。
その緊張が緩み、更に風呂で身体が芯からあたたまって、眠気に勝てなかったのだろう。
少しだけ湿気っている髪に触れ、そっと撫でる。
夢、叶えたんだもんな
頑張るよな
進路相談で教職になりたいと聴いてから、どれだけの努力を重ねてきたか。
近くにいれる恋人であっても、その努力の一部しかしれない。
儘ならない制限された生活。
ぶっつけの教育実習。
オンラインばかりの授業。
それでもただスタート地点を目指していた。
こんな格好良い恋人、世界中に自慢したいくらいだ。
ベッドに運びたいのは山々だが、動かしたら起こしてしまいそうだ。
もう少し寝かせてからベッドに移動させるかと考えながら、幼さの残る寝顔を見ていた。
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