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第38話

ふと覚醒すると床の固さに床で寝てしまっていたことを思い出す。 それと同時にここが長岡の部屋だということも。 やば…、寝てた… 風呂を済ませてうとうとして、長岡が風呂から出てくる記憶がない。 だが、身体が冷えてないことに気が付く。 すっぽりと埋もれていたブランケットから覗く顔を動かすと同じく床で長岡は寝ている。 手元には文庫本とスマホが無造作に置かれている。 それから、部屋の電気はつけっぱなしだ。 長岡はこんな寝方はそうそうしない。 半身を起こし、ふとんがかかっていることを確認して、更に時計へと視線を動かす。 時刻は0時を過ぎている。 3時間近くも寝てしまっていたらしい。 どうしよう… 起こした方が良いのか…? でも、気持ち良さそうに寝てるのを起こすのも… けど、床で寝てたら身体痛くなるだろうし寒いし… 「正宗さん…」 「………ん、」 「すみません…。 起きました…」 「俺まで寝てた」 寝起きの少し掠れた声。 顔を擦りながら前髪を邪魔そうに退かすのも格好良い。 …………じゃなくてだ。 「風邪ひいてしまうのでふとんで寝てください」 「遥登もな。 行くぞ」 文庫本を位置をずらしたローテーブルに置き、スマホを持って寝室へと移動する。 その最中も長岡は眠そうに欠伸をしている。 「湯たんぽな」 ベッドに連れ込まれ、腕の中にしっかりと抱かれる格好になると胸の奥がぎゅ…っとした。 こんな風に寝るのは本当に久し振りだ。 長岡のにおいしかしないベッドで、長岡に抱き締められながら寝る。 嬉しくて、なんだか泣きたくて。 ゆっくりと目を閉じると長岡の体温に身を任せた。 「俺の夢みろよ、おやすみ」 「おやすみなさい」

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