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第41話

腹に回していた手がとられる。 冷たい手が包み込むように握ってくれるのをされるがまま。 「やっぱ、何回見ても良い」 「指輪ですか」 「そ。 俺のって見せびらかしてんの最高」 指輪の鎮座する指をそっと撫で、またしっかりと握り締めてくれる。 それだけのことなのに安心するから不思議だ。 ハグじゃなくても、触れているところからストレス値が下がる…みたいな。 肩に頬をくっ付け触れられることを堪能していると、手が解かれた。 「?」 朝ご飯作りを再開するのだろうか。 それなら手伝… 「っ!」 急に身体の位置が入れ代わると作業台の上に乗せられる。 あまりに一瞬で驚いたが、すぐにパンを踏みつけていないことを確認する。 パンを下敷きにするどころか、ケチャップの塗り付けられたパンはいつの間にか隅に置かれていた。 すると、膝頭を割り開かれる。 「っ!!」 流石にこれは朝からえっちすぎる。 割られた脚のあいだに身体が入り込み、顔が近付いてくる。 少しだけ髭が伸びていて、男で、格好良くて。 抵抗なんてしたくない。 ぎゅっと目を瞑る。 ちゅっ 頬に触れるやわらかな感覚に、ゆっくりと目を開けた。 「嗽はしたけど歯磨きまだだから駄目なんだろ?」 いつか、ずっと前に言ったことを律儀に─この場合はわざとだ─守ってくれているのは嬉しいが、こんな状態でなんて。 俎板の上に置かれて、観賞なんて無粋だろ。 恋人の手を掴み、引き寄せると首を伸ばして唇にキスをした。

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