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第42話

朝ご飯のピザトーストを食べ、部屋に戻りスーツに着替えてから学校へと出勤する。 長岡にはゆっくり来てと言ったが無駄だった。 学校裏の職員用駐車場には既に長岡の愛車があったから。 「おはようございます」 「おはようございます、三条先生。 早いですね」 「長岡先生も、お早いですね」 先ほど分かれたばかりなのに白々しい。 だけど、今日“長岡先生”に会うのははじめてだ。 先程とは違い、セットされた髪型に社会人の顔。 隙のない色気を纏い、背筋をスッと伸ばしている。 学校でしか見ることの出来ないレアな姿。 以前なら、この姿の方が見る時間が多かった。 だが、一緒に食事をしたり多くの時間を過ごした昨晩を考えると、レアになるから不思議だ。 見慣れた姿なのに。 「今日は書店さんが来ますから、時間が合えば挨拶しましょうか。 名刺は受け取りましたか?」 「はい」 「じゃあ、勤務時間になったら少しだけ確認しましょう。 必要なら練習も」 「ありがとうございます」 長岡はチラッと時計を見ると、僅かに身を屈める。 「なんて、俺が名刺欲しいだけなんだけどな」 朝と同じにおいが空気に混じり、思わず口元を隠す。 すぐに顔に出てしまうのは社会人としてはネックになりそうだ。 もう少し加尾に出さないようになんとかしないといけない。

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