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第45話
鼻の頭が冷たいのか三条は軽く擦った。
その腕に腕時計が光る。
「長岡さん、三条先生に確認しました?」
「いえ。
まだです。
今し方まで、吉田さんがいらしてて」
「あぁ、今日でしたね。
お任せばかりしちゃってすみません…」
「いえ。
僕はクラス担当もありませんし。
それに、三条先生に色々教えることが出来るチャンスですし」
来客用のカップを洗いながら、聞いても良いことなのか迷う。
本人の前で、ましてや長岡がなにか言うことはないだろうと胡座をかいてはいるが、それでもなにか注意すべきことがあれば教えてほしい。
洗い籠に綺麗に洗ったカップを伏せて、濡れた手を不幸とすると古津が腰掛ける椅子がクルッと此方を向いた。
「三条先生。
昼と夜ならどっちが時間的に良いです?
歓迎会ってほどのあれでもないんですけど、一緒に食事でもどう……あれ…、これパワハラ…?」
困った顔をする古津はもう1人の同輩へと顔を向ける。
三条も長岡に視線をやる。
「パワハラしちゃいましょう。
三条先生は、ラーメンとかは好きですか」
「はい…」
「なら、一緒に食べませんか?
同じ釜ってやつです」
「良いんですか」
「この準備室内なら良いでしょう。
科ってなると結構人数いるからあれですけど」
「はい。
ご一緒させてください」
折角の誘いを無下にもしたくない。
それに、自分のことを考えてくれてのことだ。
そこは甘んじるべきだと思う。
長岡の言葉を借りるなら、甘えられると嬉しいというやつだ。
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