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第46話
「なら、決まりです。
後で五十嵐先生にも伝えておきます。
匂い的に金曜日が良いですけど、始業式ありますし、前日か…明日とかの方が良いですかね」
そうだ。
金曜日には、もう始業式だ。
というか、入学式も執り行われる。
つまり、着任式がある。
古典が好きなのであって、人前で話すのは得意ではない…と今から尻込みしてしまう。
「俺はどちらでも。
みなさんの予定に合わせられます」
「なら、明日でも良いですか。
多分、木曜日はバタバタしてて…」
申し訳なさそうな顔で古津は言うが、そんなの気にしないでほしい。
教師がいかに生徒が快適に学校生活を過ごせるようにしてくれていてるかを知っている。
恩師は、『そんなこと』と短く割り切ってしまっていたが、全然『そんなこと』ではなかった。
短い教育実習生活でも思った。
自分の時間を使ってまで、自分たちに時間を割いていてくれたんだって。
だから、時間を合わせられる人が時間を都合するのは当然だ。
例え、友達にでもそうする。
「はい。
分かりました」
「お店は、俺のおすすめの所にしましょう。
めちゃくちゃ美味しいですから」
「楽しみですっ」
明日はラーメンか
楽しみだなぁ
楽しみなのは三条だけではない。
きゅーっ、くるくるくる…
「っ!」
腹の虫まで楽しみにしているらしい。
「ははっ、腹減りましたね。
少し早いですけど昼にしても良いですよ。
どうせ、誰も来ませんよ」
「でも…」
「あぁ、今日は昼飯持ってきてないんですよね。
なら、コンビニまで案内しますよ」
知っている癖に白々しく微笑んでいる長岡。
「良いじゃないですか。
少し外の空気を吸うのも気分がかわりますからね」
「じゃ、行きますか」
「え…、はい」
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