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第51話

「三条先生、慣れてきました?」 「あ、…実は緊張してて」 「俺たちもです?」 「皆さんも…少し」 勿論、長岡に対しては緊張はない。 善くも悪くも見慣れた人だから。 ただ、一緒の職場で働くという機会に対しては緊張している。 それはそうだ。 憧れの恩師なのだから。 だが、五十嵐も古津も初対面の人。 良い人なのは、この数日間で理解出来たが、だからといってすぐに緊張がほどけるものでもない。 「こわくないですよ」 「それは勿論。 けど…」 「緊張するものはしますよね」 助け船を出したのは長岡だ。 「はい…」 「少しずつ仲良くなりましょう。 職場なんて仲良くなくても回りますけど、それでも仲良くした方が円滑に出来ますし」 「ありがとうございます。 頑張ります」 確かにそうだ。 仲良くなくても仕事は出来る。 そもそも一定期間で移動のある職場だ。 仲良くなれば離れが寂しくなる。 それでも、仲良くなることに利点がある。 それに越したことはないんだ。 時間をかけても良いと言ってくれる優しい人たちの役に立ちたい。 今は、頑張るしか選択肢はないんだ。 改めて気持ちを確認していると、大きなお盆を持った妙齢の女性が座敷へとやって来た。 「お待たせしました。 醤油ラーメンとチャーシュー麺とこっちが大盛りと、残りの物もい守ってきますね」 「ありがとうございます」 目の前にやって来た、大きなチャーシューののったラーメンに三条の表情がやわらかくなる。

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