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第55話
暗い部屋に帰宅…の筈なのだが、またもそのままの格好で恋人の部屋へと帰宅した。
長岡はスーパーに寄ってから帰宅するらしいので、その間に風呂掃除だ。
それから洗濯も。
事前に洗濯物の確認もしたので、朝まで着ていたシャツも回収する。
必要な洗剤や柔軟剤の準備だけ済ませてしまえば、後は洗濯は洗濯機がしてくれる。
運転ボタンを押し、まずは私服へと着替える。
スーツが苦しいかと聞かれれば決してそうではない。
可動域も制限されるのは確かだが、制服と思えばこんなものだ。
だけど、やっぱりスウェットやパーカーは楽で良い。
布もやわらかく、あったかい。
身軽になったところで風呂掃除だ。
袖口を捲り、洗剤を吹き掛け擦る。
大学時代にほぼ毎日していたことだ。
あの頃はオンライン授業ばかりで身体を動かせるのが嬉しかった。
今は、この行為で長岡が気持ち良く浴室を使えるなら嬉しいと思う。
蛇口も鏡もサッと磨く。
めんどくさくても小まめにした方が長い目で見て楽だと思う。
濡らして擦ればピカピカになるペーパーでササッと蛇口回りを拭き、ついでに洗面台の蛇口も。
こんな甘やかされてばかりじゃ駄目だよな
しっかり返せるところは返さねぇと
食事に風呂に、長岡にお世話になりっぱなしだ。
せめてもの気持ちに磨いていく。
すると、玄関先で物音がした。
そっと廊下を覗くと解錠の音。
ペーパーをシンクに置き玄関先へと向かうと、スーパーの袋を持ったその人は素の顔で微笑んだ。
「ただいま」
「お帰りなさい」
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