57 / 59

第57話

「カレーですか?」 袋からカレー粉を取り出すと、三条の目が輝いた。 「カレー。 残れば明日はカレーうどん」 「カレーうどん! だいっすきです!」 「知ってる。 すげぇ食うもんな」 ほんと、嬉しそうな顔してんな ブンブンと揺れる尻尾まで見えそうだ。 こういう犬のように素直に愛情表現が三条らしくて好きだ。 表情筋がやわらかいのか、それとも逆に鍛えられているのか、とても素直に動く。 その1つひとつが愛おしい。 「炊飯するなら、先にセットしておいたのに…」 「忘れてたんだよ。 1人なら冷凍してたやつ解凍するしな」 疑わしい…と見詰めてくる顔もまた良い。 「分かったよ。 これからは先に帰った方が炊飯な」 「はいっ!」 「嬉しそうな顔して。 毎日この部屋に帰ってくんだぞ」 「はいっ」 言ってる意味を理解しているのかどうか怪しいところだが、まぁ良いか。 約束、と口にリップ音を落とした。 「…キス解禁してから、すごいしてませんか…?」 「嫌か?」 「そんなことは…っ。 けど、久し振りだからか照れます…」 いつも照れてんじゃねぇか、という言葉は飲み込んだ。 スイッチが入れば三条からも積極的なキスをしてくるから。 「慣れるまでしまくるか?」 「……大人は狡いです」 「ははっ、なら、飯食ったらな」

ともだちにシェアしよう!