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第65話

「じゃあ、事務室行ってきます」 「はい。 分かりました」 みんな出払ってしまい、準備室には長岡と三条の2人きり。 とはいえ、ここは職場だ。 盛ったりしない。 恋人にも戻らない。 一定の節度はある。 パソコンを使い、授業で必要なプリントを制作していく。 春休みの課題をしていれば簡単な復習問題だ。 ここから授業で足並みを揃えていく。 いよいよ新学期だ。 「あ、そうだ。 明日、着任式だけど大丈夫か?」 「着任式…」 仕事になれることに必死ですっかり明日だと忘れていた。 生徒に対しての着任式。 全校生徒が集まる、新年度最初の集会で行われる。 そこで三条含め新しく赴任してきた教師が挨拶をするんだった。 「そう。 なんか話せるか?」 「自己紹介なら出来ます。 大丈夫です」 「一発芸もだぞ。 しきたりなんだ」 「一発芸……」 三条が固まってしまった。 一発芸がしきたりなんて聞いていない。 というか、それはご時世的にハラスメントなんじゃ…。 三条の顔がそう物語る。 「出来るか? はじめの掴みが大切だぞ」 「あの……、長岡先生も、したんですか…?」 「勿論。 プロ野球選手の物真似な」

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