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第77話
「……っ」
腹の音が響く。
本当に、限界は近い。
「は、ら…痛い…」
「我慢が上手だな」
よしよしとあやすようにハラを撫でられ、またグルル…と腹が鳴る。
甘えるように。
媚を売るように。
どんなに甘えても長岡は限界を読むから無意味なのに。
「ト、イレ、貸してください…」
「なら、強請れよ。
こっち向いて、目ぇ見て。
あぁ、キスもしてもらおっかなぁ」
楽しそうな顔に振り返ると、やっぱり楽しそうな顔をしていて。
ニヤニヤと口元を緩めていた。
湯船から出した手から雫が落ちる。
その手で恋人に触れ、ゆっくりと身体を近付ける。
「…目、閉じてください…」
「んー?」
「…目、見ます」
「ほんと利口だよな」
どこまでも楽しそうな恋人と、便意で腹が痛い自分。
こんなに差があるのに対等だ。
なんだか不思議だ。
勿論言葉遣いも敬語で、周りから見たら差はあるだろう。
けど、長岡本人はそんな風には扱わない。
どこまで対等でいてくれる。
「…、し、つれいします」
恥ずかしい。
真っ直ぐに自分を見てくる長岡に顔を寄せると、視線で心臓がバクのように早鐘を打つ。
やわらかな肉の感触にキツく目を瞑った。
その時だった。
腕が腰に回るとガッチリと固定してくる。
「もっとしてくれよ」
綺麗な顔でサディスティックな声を響かせる恋人は、やっぱりサディストだ。
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