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第116話

大切そうに鍵を包まれる。 「ありがとうございます。 はじめてだよ。 大切にするな」 「はじめてなんですか?」 「はじめてですよ。 信じてねぇな」 この顔で恋人がいなかったとは思えない。 以前お付き合いしていた人がいても驚きはしないというか、あの時まで付き合ったことがないなんて逆に不健全だ。 セフレがいたと言われたらそれはそれで驚かないというか。 ……寧ろ、自分と付き合うまで童貞なんて方が意味が分からなくて嫌だ。 「なに考えてんだ?」 「いえ」 「嬉しいんだな」 「合鍵ですか?」 穏やかな目が伏せられ、睫毛の陰が落ちる。 セックスの最中は男らしいと感じるが、こうやって見るととても綺麗だ。 美人な男性…とでも言うのか。 けど、そんな見た目よりその目が嬉しい。 目は嘘を吐けない。 一瞬に素が出てしまう。 「俺も嬉しいです。 正宗さんが嬉しいって思ってくださることも、正宗さんが子供の俺に合鍵をくださったことも」 お揃いだな、と笑うその顔も。 「冷めますから、食べませんか」 「うん。 そうだな」 鴨と葱をのせ、更に刻んだ葱をのせる。 トッピングは多くて困ることはない。 「葱だくだな。 美味そ」 「正宗さんが沢山買ってきてくださいましたから」 「んじゃ、いただきます」 「いただきますっ」 2人で手を合わせ、少しだけ冷めてしまった蕎麦を食べる。

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