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第117話

「美味い」 「お口に合って良かったです」 「鴨南蛮なんて久し振りに食うよ。 たまに部屋でも作るか」 嬉しそうな顔に、三条の表情筋もふにゃっと緩む。 こんなしあわせなことはない。 大好きな人と一緒にご飯を食べれる。 それだけで世界は優しいと思える。 「葱たくさんなのも良いな。 美味い」 いつもより弁舌な長岡に気が付くと、それはより思う。 「正宗さん、可愛いです」 「おじさんが可愛いか? 若い感性ってのは自由だな」 だって、気持ちが分かるから。 嬉しくて、嬉しくてたまらなくて。 それをどう表現したらいいか分からなくて。 正解なんてないって分かっていることでも、ちゃんと手渡したいと思う。 そういうのを愛おしいと呼ぶんだろう。 「おかわり食べませんか」 「遥登も食え。 小さい茶碗じゃ足りねぇだろ」 「おかわりしてますよ」 「もっと食え。 まだ段ボール運ぶんだろ」 本の詰まった段ボールは最後に解こうと思っていたが、なんだかんだ1番体力を使いそうだ。 学生時代の教科書やノートの類いも大切な物なのでそれもと詰めはじめたら、そこそこの量になってしまった。 それを本棚を組み立てて、片付けていくとなると案外体力を使いそうだ。

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