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第119話

悪いことすっか。 そんな言葉に昼寝をした。 それから、軽く飯を食べ、“悪いこと”。 「綺麗ですね!」 「綺麗だな」 コンビニで飲み物を買って夜の花見。 桜はいつ見ても美しいが、昼の可憐さから月明かりのみになるとその姿はガラリとかわる。 艶やな色気を孕ませ、誘ってくる。 だからこそ、日本人は桜が好きなのだろう。 「ビール飲もうぜ」 「これは悪いですね」 「アイスも極悪だろ」 頬をふくふくさせながらアイスを受け取る三条も、夜になると艶やかになる。 今は食べ物の誘惑が勝っているだけだ。 昨日もえろくて可愛かった。 アイスを目の前にして嬉しそうな顔もすっげぇ好きだけどな。 ベリッと包装を空けるのを横目に飲み物を取り出す。 「置きますね。 正宗さんも食べてください」 「ありがとう」 更に缶飲料を手渡し、自分の分のプルタブを起こす。 カシュッと心地良い音が静かな公園に響いた。 それから隣も続く。 「乾杯しようぜ」 「はい。 待ってください」 三条はレモンサワーを手に此方に向けてくる。 下げてくる辺りに性格が見えるが、そんなもんこうするまでだ。 三条が支える底に指先をかけると缶を斜めにしてぶつける。 「乾杯」 「あ゛」 「経験値の差だよなぁ」 「狡いです。 なんですか、今の」 「さぁ?」 「大人は狡いです」 年下の自分がグラス─この場合は缶だが─をぶつけられなかったのが悔しいのだろう。 珍しい顔を見たくてしてみたが良いものだ。 表情豊かな恋人だが、勉強関係でもここまで顔にしない。 そんな三条の珍しい顔だ。 けど、まぁ、渋る顔見て嬉々と喜ぶほど鬼ではない。 アイスと1つピックに指すと、口元へと差し出す。 「どうぞ」 「……いただきます」 パクッと口にすると、すぐにふにゃっと蕩ける。 こういうところが良いんだよな その顔を染々と噛み締めながらビールを煽った。

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