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第121話
酒を飲みあげ、まとめたゴミを片手に部屋へと帰る。
アルコールが手伝ってもまだ花冷える。
風邪をひく前にあったかい風呂に浸かって体温をあげたい。
「正宗さんは桜が近くに見えてお得ですね」
「ん?
あぁ、そうだな」
頭に付きそうな位置に枝が垂れてる。
それを邪魔だととるか、花のにおいが濃いととるか。
それだけの考え方の違いで人生の豊かさがかわるから不思議だ。
別に前者の考え方であろうとなんら人生に不都合はない。
ただ、後者の方が面白い。
それだけだ。
それだけ、が良いんだ。
そういうこと、と気付けるから。
視線のほんの少し上の花を見ながらその愛おしさを噛み締める。
「おかしなこと言いましたか?」
「いや、遥登らしいなぁって思っただけだ。
可愛いなって」
「また子供扱いです」
「大人扱いしたろ。
昨日の夜」
「…っ!」
少しだけ身を屈めて耳元で囁くと三条は恨めしそうにこちらを見てきた。
こちらの方が豊かだと思う。
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