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第124話
「あの…やっぱり歯磨きしてから飲みたいです」
「それもそうか」
長岡は腰を下ろすことなく洗面台を目指す。
それに続くと、背後で聞き慣れたCMがはじまった。
後ろ髪引かれる気もするが、冒頭数分は割り切るしかない。
歯磨きやうがいせず飲食するのもあれだ。
どちらが良いかと聞かれれば、歯磨きを優先だ。
実家のように歯磨きしながらテレビ…なんてのは流石に行儀が悪すぎる。
親しくても礼儀は大切だ。
「それにしても、正宗さんよく時間知ってましたね。
放送時間、変わったじゃないですか」
「観てたからな」
「子供の頃ですか?」
「今のも」
歯磨きしながら欠伸する長岡は、口の中が鏡に写らないように壁を向いていた。
「たまに起きれなくて寝てたけどな」
「面白いですか?」
「面白いよ。
大人が真面目につくってんだからな。
レンジャーの方も観てるぞ」
長岡らしい回答に、つい笑ってしまう。
子供向けとか大人向けとか、そんなラベルを無視し中を見てくれる。
きちんと食べて、美味いと伝えてくれる。
そこら辺の大人よりずっと誠実で大人だ。
「面白いですよね。
今回は踊ってませんけど、エンディング踊ったりするんです」
「あー、魔法レンジャー踊ってたな。
あれ、まだ続いてんのか?」
「はい。
魔法レンジャーって俺が年長とかだった気がしす。
当時は弟もいなくて1人で真似してました」
「かわい。
後で踊ってくれよ」
歯磨きを選んで良かったと思えるのは恋人のお陰だ。
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