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第136話
時間は少しだけ巻き戻る。
少し早めに教室に向かうという細い背中を見送った。
少しすると、予鈴が校舎に鳴り響く。
長岡も確認テストの採点がある。
気にかけてばかりはいられない。
公私混同は駄目だと三条も言うだろう。
気持ちを入れ替え、机に向かう。
「長岡先生、見てきたらどうですか」
「え、…」
「あ、トイレに行ってきたらどうです。
膀胱炎はこわいですよ」
そんなにソワソワしているだろうか。
落ち着きがないか。
恥ずかしい。
社会人として正しくいようと思っていた。
なのに、三条の事を除いて、になってしまっている…。
こんなことではいけない。
そう思うのに身体は正直だ。
三条のことを言えた立場ではない。
「教え子のはじめての授業ですよ。
見れる事なんてそうそうないんですから、行ってきてください。
行くべきですよ」
確かにそうだ。
教え子が教師になるのも学年に数人。
クラスとなると1人もいないクラスだって存在する。
そして、同じ学校に振り分けられるのはもっと少ない。
心が揺れる。
良いのだろうか。
「帰ったきたらコーヒー淹れてください」
五十嵐は電話番してます、とにこやかに続けた。
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