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第140話

「ただいまかえりました」 少しだけ居残りをして帰ってくると、部屋の中から良いにおいと共に笑顔が迎え入れてくれた。 また晩飯を作ってもらってしまったらしい。 出来る方がしたら良いだけだ、という言葉に甘えてしまっているが平日はほぼ甘えてばかり。 早く時間の感覚を掴んで、長岡の負担にならないようになりたい。 「おかえり。 疲れたろ」 「大丈夫です」 提示から数時間の残業なんて教職員にはよくあることだ。 長岡だって20時過ぎまで学校にいることだってあった。 それに比べたら1時間程早く帰宅出来た。 スーツのまま来てしまったが、長岡は嫌な顔ひとつしない。 心配そう…といえばそうか。 過保護な人だから。 手洗いをしていると、背後から抱き締められた。 「あの…」 「んー?」 「授業観に来てましたよね…?」 「バレたか」 教卓の上というのは案外室内を広く見えるものだ。 後ろの席は人気だが遠くからだと手元がよく見える。 逆に近すぎる前の席は案外視界から外れてしまう。 そんな中で、後ろのドアに人影があれば分かる。 「悪かった」 「え? なにがですか?」 「信じてねぇみたいで」 「そうなんですか?」 わざとそう言うと長岡は抱き締める腕に力を込めた。 「成長しやがって」 「長岡先生のクラスでしたから」

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