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第143話

大切なことを思い出した。 「あ、嗽してません」 「平気だろ」 「平気じゃなかったらどうするんですか」 マグカップに水を注ぐと恋人へと差し出す。 長岡は自分を見てからマグへと視線を移した。 「分かったよ」 ガラガラ、ブクブク、と口の中を漱いでくれる。 2人揃って休むとなると他の職員の方々のにも申し訳ない。 まして、着任して早々だ。 自覚がないと言われてしまうのも致し方ない。 あと、やっぱりこの顔を休ませてしまうと授業の保養がないというか。 「嗽したぞ。 遥登もすんだろ」 「あ、はい。 ありがとうございます」 再度水の汲まれたマグを受け取り、自分を嗽をする。 せめて迷惑をかけないようにしたい。 覚えることも沢山ある。 早く役に立ちたい。 生徒にも先生方に対しても。 隣からビリッと紙の破れる音がし、すぐに口元を拭かれた。 「帰ってきたら仕事の考えんな。 ここで考えたって給料出ないんだぞ」 「そうですけど…」 「今は俺見てろ。 あと牛丼」 「牛丼って」 思わず笑みが溢れる。 本当のに俺の扱いの上手い人だ。 だけど、今はそれに甘えさせてもらう。

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