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第147話

濃いピンクの垂れ桜の下のベンチに下ろすと、目の前にしゃがみ込んでアイスのパッケージを開ける。 ゴミは今度こそ鞄につっこんだ。 「ほら、3つな。 もう3つは俺の。 あと、ご飯の前だから父さんと母さんには秘密な」 小さく頷く頭を撫で、次はジュースにストローを刺す。 どっち?と両方差し出せばオレンジを取った。 「乾杯」 やわらかな紙パックをぶつけ、ちゅーっと吸い上げた。 甘くて、爽やかで、冷たい。 同じ様に小さな口がストローを銜え、ちゅーっと吸った。 空気の逃げ道がないのか、吸い終わるとちゅぱっと音がする。 1度ストローを少し抜いて再度刺し直した。 気休めだがな。 それからアイスにピックを突き刺して小さなてに握らせる。 チマチマと食べるのを見守りながら、漸く隣へと腰を下ろした。 「……はうに、あいたい」 「兄ちゃんは仕事だろ」 「あいたいもん…」 ポツリ、と溢した言葉をきっかけに綾登はクズりはじめる。 家族に会いたいと思うのは当たり前のことだ。 いくら兄が仕事で実家を離れたとしたと、まだ5歳の弟には寂しくて悲しいこと。 けど、それを素直に口に出来たのは偉い。 我慢するんじゃなくて、言葉にする。 赤ちゃんじゃなくなっていってるんだとこういう小さなことから知っていく。 それに、綾登には連絡手段がない。 俺みたいにアプリでやりとり、なんてしてない。 そうか。 そうだよな。 気が付いてやれなかった。 帰宅出来るのがどんどん遅くなる兄の顔も浮かんだが、隣の小さな頭をくしゃっと撫でた。

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