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第149話
『あ、兄ちゃん?
俺。
綾登が電話したいんだって。
今、大丈夫?』
鍵を閉め、靴を脱ぎながら通話ボタンを押すと、弟の第一声はそれだった。
「うん。
どうした?」
『あー、まぁ…泣いてて。
とりあえずかわる。
綾登、兄ちゃん』
「もしもし、綾登?」
『はう……、ご、ごめんなさい』
ベソベソと泣き出した綾登の後ろで、優登の声が聞こえる。
どうかしたのだろうか。
いつもニコニコご機嫌かプンプン頬を膨らませてるかなのに、こんなに泣くなんて。
「ごめんなさいってどうした?
ゆっくりで大丈夫だから、そう、息しようか」
『あー、泣くなよ。
鼻水出んぞ』
『…あ、あのねっ、…あの、ね…、あいたい…。
いつ、かえってくる…?』
一層酷くなる泣き声に胸が痛い。
『わがっ、わがままっ、いっちゃった。
ごめっ、なさい…っ』
「我が儘じゃないよ。
寂しいって思って、ちゃんと優登に言えたんだろ。
俺にも伝えてくれた。
偉いよ。
すごいことだよ。
謝らなくて良いんだよ」
『ほら、ティッシュ。
鼻水垂らすなよ』
やっぱり休日に顔を出すべきだったか。
家族にも長岡にも甘えてしまった。
その結果、末っ子が泣いたんだ。
申し訳ないなんて言葉では気持ちは割りきれない。
時計を見てから下ろそうとしていた鞄を持ち直した。
「じゃあ、これから帰ろうかな。
朝早くには帰るけど、一緒に寝てくれる?」
『ね゛る゛…』
「ははっ、じゃあ、電車で帰るから。
うん。
優登にそう伝えて。
みっちゃんにも。
ご飯作ってって。
言ってくれる?」
『う゛ん。
ゆーと、はう、でんちゃでくる。
ごはんつくって』
『うん。
分かった。
あとで迎えに行くか』
『うん』
今脱いだばかりの靴を突っ掛け、鍵を開けた。
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