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第152話
着替えに行こうとする足が急に重くなった。
下を覗けば小さな頭がしがみついている。
「着替えてくるだけだよ」
「んー…」
「じゃあ、綾登も行こう。
スーツ干すの手伝って」
「んっ」
さらっと手を繋いできた。
この歳からイケメンブームというやつか。
誘導するかのように1本先を歩きだす。
だが、すぐに立ち止まった。
「ゆーと、おやつ」
「はいはい。
用意しとくよ」
「綾登、ご飯が先だよ。
おやつはその後」
母親の声に、ぷっと頬を膨らませたがまぁ良いか。
やっといつもの表情になってきた。
ベソベソした顔も可愛いが、元気なことに越したことはない。
漸くいつものらしさが出てたようだ。
それだけで帰ってきた意味がある。
ゆっくりと階段を昇り、奥の部屋。
ついこの間まで毎日帰ってきていた自室は、たった数日経ったくらいでは懐かしくもなんともないが妙な安心感がある。
自分の選んだ物に囲まれた部屋とも違う。
「なに着よっかなぁ」
「くろ」
「黒か。
これは似合う?」
「んっ」
「じゃあ、これにしよ。
それと、スーツこれにかけられる?」
「できる」
既に脱いでいるジャケットを手渡し、その間に着替えをする。
火の気のない部屋は少しだけ寒く、スーツの下に着ていたセーターとワイシャツを脱ぐと肌寒く感じる。
いそいそとスウェットを被り、チラッと横目で弟を見ればしっかりとジャケットを床に広げハンガーを差し込んでいる。
どうやら知らない間に出来ることが増えたらしい。
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