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第153話

「おいしねぇ」 「うん。 美味しいな」 隣を譲らない優登と問答をし、綾登はその反対側へと椅子を移動させた。 そこで、にこにこしながらご飯を食べている。 間に末っ子がいなくなり、両親は寂しいのかと思いきや、大好きな母の隣の席になれた父は別の意味では寂しくなさそう。 良いのかと聞かれるとそれはそれで寂しい気もするが、夫婦仲が良いことは家庭の為にも大切だ。 それに、好きな人の隣で食べる食事は美味いのを知っている。 たまには新鮮で良いのだろう。 「おにく、すき」 「俺も好き」 「いっしょ!」 生姜焼きを食べながら、ぼんやりと長岡のことを考えた。 今頃一人で食事をしているのか。 寂しくはないか。 それはそれで、気になる… 俺のことは気にすんな、ご家族との時間をゆっくりとれ、だなんて連絡がきたが気になるものは気になる。 長岡も家族なのに。 線引きと言うは難しい。 「とまと、いる?」 「綾登が食べな」 「あげたい」 「じゃあ、交換しよう」 真ん丸いミニトマトがお皿に置かれ、自分の皿から同じのを小さな皿へと移す。 にこぉ、と笑う顔はとても嬉しそう。 長岡が守れと言ってくれているのは、この笑顔だ。 本当に有り難いことだ。 だから、今はこのふくふくした笑顔を萎ませない。 「優登、父さんのトマトと交換するか?」 「しねぇ…」

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