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第154話

綾登を起こさないように部屋を抜け出ると廊下で着替える。 ベルトの金属音や布切れで起こしてしまいたくない。 一旦部屋に着替えに帰りたいので、いつもより早い電車に乗りたい。 ワイシャツを持ってくれば良かったと気が付いたのは持ち帰りの仕事をしている時。 2日連続はあまり気持ちの良いものではないし、父の…というのも。 なるべく清潔感のある服装をしていたい。 一緒に寝るとは言ったものの、持ち帰り出来るものは持ってきたので綾登と寝るとそっとベッドを抜け出て仕事をしていた。 弟に申し訳ないと思いつつも、今は吸収出来ることがあればなんでも吸いたい。 そんな我が儘で隣にこそいたが、1人で寝させてしまった。 申し訳ない気持ちは次こそ綾登と泣く前に帰って来ることでなんとか挽回していきたい。 「遥登、おはよう」 「おはよう」 早く降りてきたはずだが母は既に朝ご飯の用意をしていた。 此方に関しても気を遣われているのが分かるが、有り難く甘えさせてもらう。 「ご飯食べて行く? お昼はタッパーに詰める? おにぎりがいい?」 「食べる。 俺の分もありがとう。 昼までいいの?」 「綾登のこと、ありがとう。 仕事もあるのに」 自分のマグにインスタントコーヒーを入れながら朝ご飯を覗き込むと、珍しく明太子の入っただし巻きたまごだ。 「母さんたちだってそうしてくれてたのに? 俺だけ特別扱いかよ」 「そういうところお父さんそっくり」 「喜んでいいの?」 「いいと思うよ。 お母さんは好きだから」 隣に立つ母はなんだか少し小さくなった気がする。 長岡の隣に居すぎてバグったのだろうか。

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