162 / 162

第162話

1つキリがいいところまで仕事が終わると、隣の席の椅子が軋んだ。 「なにか飲みますか?」 「あ、なら、俺がします」 「僕が先に声をかけたから駄目です。 コーヒーで良いですか?」 長岡はひょいとマグカップを手に取るとポットの元へと歩いていった。 歩いたと言っても脚が長いので数歩だ。 今更脚の長さの差で凹んだりはしない。 長岡が異世界なんだ。 「ありがとうございます。 あの……、あと、なんで俺にまで僕って使うんですか」 「学校だからですよ」 「なんか慣れなくて…」 「慣れてください、三条先生」 とても厚いオブラートに包んでみたが、長岡はにっこりと微笑むばかり。 まぁ、この顔は分かっていてしている顔だ。 週に何度か準備室に長岡と2人きりの時間があるが、まったく慣れない。 それも、長岡の一人称は社会人の『僕』。 学生の時は『先生』と自身のこと呼ぶこともあったので、どうも聞き慣れない。 「はい、どうぞ。 熱いですよ。 気を付けてください」 「ありがとうございます。 先生も、チョコレートです」 「ありがとうございます。 これ、美味しいよな」 ラムネと高カカオチョコレートは常備している。 エネルギーの補充に適しているからだ。 それの個包装を数枚手渡すと、またにっこりと笑った。

ともだちにシェアしよう!