175 / 190
第175話
「んー、美味しいです」
根曲がり竹の味噌汁も美味い。
生姜焼きも美味い。
付け合わせの春キャベツの千切りも美味い。
なにを食べても口の中がしあわせだ。
厚揚げを焼いてくれ、そこにも生姜がのせられている。
この一手間が嬉しい。
長岡は自分がそうして食べたいからと言うだろう。
けど、それでも嬉しい。
大きな口で頬張ると隣から伸びてきた箸が同じ物を掴んだ。
「沢山食えよ。
足りなきゃまだ作る」
「ありがとうございます」
蕨の漬け物まであり、すっかり春の食卓だ。
菜の花やホタルイカも春らしいと思うが、山菜の季節は案外短い。
そりゃとても若い新芽だけを採るのだから当たり前か。
それを長岡と楽しめるのは春のほんの一瞬の贅沢だ。
「ご飯食べ終わったらブランデーケーキ食べますか?」
「良いのか?
弟がくれたんだろ」
「はい。
一緒に食べたいです。
けど、ゴールデンウィークにおやつに食べるのもありです」
「あー、コーヒーと食べるのも良いな」
ご飯を食べながら食後の話なんて。
けど、こういう飾らない会話が出来る関係性だと思うと満更でもない。
「明日、大切に食うか?
俺がコーヒー淹れる」
「はいっ。
楽しみです」
ともだちにシェアしよう!

