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第243話
フロアワイパー片手に部屋をうろうろしていると、解錠音が聞こえた。
それを合図に玄関へと続く廊下へと出る。
エコバックを手にした長岡が
「おかえり」
「ただいまかえりました。
けど、おかえりなさいは正宗さんの方ですよ」
「それもそうか」
エコバックを持ったまま長岡は少し腕を上げて見せた。
「じゃ、ご帰宅のハグ」
「なんですかそれ」
さっきまで教師の顔をしていた人とは思えない。
だけど、そういうところが好きだ。
自分の前では飾り付けない。
高校の時からかわらないそんな正直なところが大好きだ。
上がり框から下り、身体に腕を回すとケツにエコバックが触れた。
「お疲れ。
すぐ飯にしような」
「すぐに飯ですか?」
「すぐに飯ですよ」
すぐに、と口は言ってはいるが抱き締める手は離れない。
疲れたなんて思うほど働けてはいない。
それでも、こうして抱き締められると日中の考え事やあれこれが薄れていくようだ。
30秒のハグでストレスの32%が解消されるのも嘘ではないのだろう。
そして、学生時代によく長岡が抱き締めてきていた理由が今になって分かる。
意識下でも無意識下でも、そうしていたかったのだろう。
「風呂も一緒な」
「え…」
「すっげぇ甘やかしてぇ」
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