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第9話
「僕は、ゴムはレインボー、コースターは赤で。課長はどれにします?」
「え、あー、わからない」
朝霞はとっさに何を選べばいいのかなんて判断が出来なくて、わからないと答えた。
「じゃあ、白にしますね。ビールでいいですか?」
「あ、ああ」
しばらくすると、飲み物が運ばれてきて遠山のグラスにはレインボーのゴムがかかり、コースターは赤。朝霞のものは両方白の状態になっていた。
「遠山、悪い。これどういう意味だったんだ?」
運ばれてきてもなお、意味がよく理解出来ていなくて朝霞はもう一度遠山に確認してみた。
「ああ、グラスのゴムが恋愛対象というか性的な対象みたいですね。女が好きなら赤、男が好きなら青、両性ならレインボー、わからないなら白。で、コースターはSなら赤、Mなら青、両方できるなら紫、わからなければ白、です」
言われて朝霞は遠山の飲み物に目を向けた。朝霞は選ばなかったが、遠山は選んでいたからだ。
――ゴムはレインボー、コースターは赤。という事は…。
朝霞がじっと遠山の飲み物を見ていると、視線に気が付いたのだろう遠山が朝霞を見る。
「気になりますか?僕は両方というか問わないのでレインボーです。で、コースターは赤。基本多分こっちなので」
「赤って…、その…あれ、か?」
遠山もだから、女に対しては攻め側に回るのだろうけれど、男に対して受ける側になるのなら、何色になるのだろうか。そもそも、SとかMとかこの店はどういう店なのだろう。朝霞は、ラウンジのようなバーでショーがあるとしか聞いていなかったから、この店がどういう店なのか全く知らないのだ。
「あ、そろそろ始まるみたいですよ。バーで出会った琉唯さんって方が出てるんですけど」
照明が少し落ち、店内が薄暗くなる。遠山は朝霞にショーが始まるのだと言って舞台を見るよう促した。舞台に目を向けると、幕の端で店員がショー開始の挨拶をしている。挨拶が終わり、幕が開いた。
――…何、だ…これ…。
幕が開いた瞬間、朝霞の視線は舞台にくぎ付けになった。舞台の上には聖也と紹介された長髪の黒髪が美しい男が立っており、裸に首輪と猿ぐつわを着け四つん這いになった男を踏みつけている。
『恥ずかしいですか?こんなにたくさんの観客に見られて。…ああ、でも、あなたは恥ずかしいのも好きな変態だから、うれしいでしょう?』
豪華なタキシードのような衣装を身にまとった聖也が、男に言うと男は高く持ち上げた尻を振って喜んでいるようだ。四つん這いの男の尻を聖也が持った馬鞭の先端が滑る。
『打たれたいですか?ふふふ。本当に貴方は可愛らしい。仕方ありませんね。いきますよ』
聖也が四つん這いの男に打たれたいのかと問いかけると、男は口に咥えさせられたもののせいで言葉を発することが出来ない為だろう、頭を上下に振り聖也に打たれたいのだという事を伝えている。
聖也は、男の尻に這わせていた鞭を振り上げ、バシンっという激しい音を鳴らして男の尻に一撃を放った。
打ち付けられた瞬間、男の背がしなる。相当の痛みを伴っているだろうに、男の顔は恍惚とした表情を浮かべている。足の間からのぞく男の屹立は立ち上がり、先端からは液をたらし、男にとってその行為が快楽であることが分かる。
――SMのショーって事だったんだな。
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