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第10話
さすがに朝霞もこの店がどういう店なのか、何となく理解出来てきた。おそらくここはSMの嗜好を持つものがそのショーを楽しんだり、出会いを楽しんだりするための場所なのだろう。朝霞と遠山が選ばされた、性対象と属性の目印は、そのためのものなのだと理解した。
『見られているというのに、だらしなくこんなに垂れ流して。あなたは分別のない犬と同じですね。尻尾をつけてあげますよ。今のあなたにお似合いでしょうから』
聖也は男の尻を軽く叩いて、男に指示を与える。男はそれを察して聖也に向かって尻を突き出した。男の尻の上にトロリとローションが垂らされ、聖也の指が男の後孔に突き立てられると男は塞がれた口からくぐもった呻きを漏らす。グチュグチュと卑猥な音が響き、聖也は男の後孔にふさふさした尻尾のような飾りのついたバイブを差し入れた。
男の身体ががくがくと震えだし、男が快感に耐えているのだろうことが分かる。聖也は男を満足げに見下ろして、突き立てた尻尾を動かした。
『良さそうですね。イきたいですか?』
聖也の言葉に、男は必死に首縦に振り、いかせて欲しいのだと懇願している。聖也は男の首輪に着いたチェーンを引き、男に身体を起こさせると、男の屹立を締め付けていたベルトを外し男に言った。
『いいですよ、触っても。ああ、せっかく尻尾をつけたので、四つん這いに戻って貰いましょうか。犬のような格好で、はしたなく腰を振ってイクのがあなたにはお似合いですよ』
聖也の許しが出たからだろう。男はもう一度四つん這いになり、まさに犬のような恰好をして自らの屹立を擦り上げ、後孔に埋め込まれた尻尾を激しく振り乱し、絶頂を迎えた。
幕が下り、次のショーまでの間少しの時間が空くようだ。ショーを見終わった朝霞は、今までに見たことのない光景に、圧倒されていた。
「大丈夫ですか?課長」
衝撃すぎて一言も発せられずにいる朝霞を遠山が心配そうな顔でのぞき込んでくる。声をかけてくる遠山は、平然としていてあまり動じている様子はない。
「…遠山、お前、いつもこういうの見てるのか?」
余りにも平然としている遠山に朝霞は尋ねた。こういうのを見慣れているのかと思ったのだ。
「いえ。初めてです。ここに来るときに行ったことないって言いませんでした?あと、もう一人出るんで、それを見てから帰りたいんですけど、課長って家どのあたりですか?ここから離れてます?」
「いや、大丈夫だ。〇〇駅の近くだから、そう遠くはない」
もう一人見てから帰りたいのだという遠山に、朝霞は大丈夫だと返したものの、心の内ではかなり動揺していた。けれど、付き合うことに了承したのだから、遠山が見たいところまで付き合うべきなのだろうと考えたのだ。
「え?課長も○○駅なんですか?僕もなんです。じゃあ、帰りタクシーにしません?」
「え、ああ。そうだな」
二幕が始まる前にと遠山が飲みものを注文して、飲み物がテーブルに届いた頃、司会の男の案内と共に再び幕が上がった。
舞台上には先ほどとは雰囲気の異なる琉唯と紹介された男が立っていて、もう一人の男は天井の鎖から伸びたフックに縛られた両手を吊るされている。
琉唯は長身だが顔立ちを見ると20代半ばくらいに見える。黒髪を少し後ろに流し気丈そうな雰囲気だ。
『部下に縛られる気分はどうだ?』
琉唯は吊るした男に視線を向けて男の反応を窺っているようだ。
――二人ともスーツなのは、上司と部下の設定なんだな。
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