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第15話

 俯いた朝霞の顔を覗き見て、遠山が楽しげに笑う。家で飲み直そうと言われたときに、興味さえ抱かなければ、こんなことにはならなかったのではないか。そんな考えが朝霞の頭を過ったが、隣に住んでいるのだ、遅かれ早かれこんな日が来たのかもしれない。けれど、いきなり過ぎて、思考がついていかない。 「あ…あの、…やっぱり、帰る」  帰ったとしても来週になれば顔を会すことになる。そんなことは朝霞だってわかっていた。けれど、隣人に行動がバレていたという事実と、その隣人が遠山だったという事実を知ってしまって、この場にいるのが耐えられなくなった。  ソファから立ち上がり、廊下の方へと歩き出した朝霞の手を、同じように立ち上がった遠山の手が捕らえた。そのまま壁へと押し付けられて、朝霞の足の間に遠山の足が割り込んでくる。遠山の行動に驚いていた朝霞の屹立に足を押し付けて、遠山の手が胸粒を掠めた。 「っ…ぁっ…」  声をあげた朝霞の顔を、ニヤリと笑った遠山が見つめる。 「されたいくせに。ここ、もう感じるようになっただろ?」  対格差がある。本気で逃げだそうと思うのならば、遠山の身体を突き飛ばして玄関まで走り抜けることは可能だろう。そう思うのに、なぜだが身動きが取れない。手を掴んでいる力も、普通につかんでいるだけで、遠山が全力で押さえつけているわけではないのだろうと思うくらいの加減なのだ。  足をグリグリと押し付けられ、臀部を撫で上げられる。ショーを見ていた時に集まってきた熱を治めたはずのそこに、再び熱が集まってくる。 「ショーの奴みたいに、責められてみたい。そう思ったんだろ?やってやろうか?」  耳元で、クスクスと笑う遠山の声が聞こえる。  会社の部下だからとか、恥ずかしいとか、いろんなことが頭を過るのに、足が一歩も動かない。じっと朝霞と視線を合わせ、話しかけてくる遠山の目は、まるで獲物を捕らえた獣みたいだ。逃げ出す隙を与えない雰囲気で、怖いくらいなのに魅力的だ。  ――どうせバレているんだ。…だったら…。 「ははっ、…いい子だ。入れよ」  朝霞が黙って頷くと、遠山は満足げに笑ってベッドルームのドアを開けた。  ベッドの上で朝霞は裸の状態で手を縛られていた。  部屋に入った朝霞に、遠山が服を脱げと命じたからだ。服を脱ぎ裸になった朝霞の手を、遠山はロープで縛った。ベッドに寝るように言われて、朝霞は今寝転んでいる状態なのだ。両手を上にあげておくように指示をされて。  ――恥ずかしい…。  頷いておきながら、羞恥心が半端ない。服を脱いでいる時も戸惑っていたら、遠山に早くしろを叱咤された。いっそ脱がされた方がまだ恥ずかしくないような気がした。 「さてと、この間の指示、どのくらい出来てるか確認してやるよ」  遠山はベッド上に道具を並べて朝霞に言った。ローション、エネマグラ、小さめのバイブ。朝霞に買ってくるように指示したものと同じものが並んでいる。視線の端にそれを確認して、朝霞は身構えた。  ――本当に、確認するつもりなんだ…。  遠山の誘いに乗ったのは自分自身だ。けれど、あの快感を、家でのあの痴態を今から晒すのだということを、よりはっきりと認識させられる。 「あの、やっぱり…」 「観念しろ。どうせ、全部聞いて知ってる。ただ、見るのは初めてだけどな。…足開けよ」

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