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第4話 恥ずかしいが増えていく

じゃあ彼女にでも頼んだら? って聞いてみたら、もう結構長いこと恋人なんていないらしい。忙しすぎて付き合ってみても長続きしないんだとさ。 今となっちゃ俺の工房に来る以外はほとんど王宮と自宅の往復だけなんだと笑ってるけど、そんなに忙しいのに足しげく通ってくれるってのはなんかこう……ちょっとだけ……ちょっとだけ嬉しいかも知れない。 こんな魔道具くらいしか見る物がないような工房でも、少しは息抜きになってるならいいけど。 あったかくって美味しいメシと、俺の口にも合う甘めの酒を持ってチェイス室長が訪ねてくれる日は、殺風景で孤独な俺の工房も少しだけ華やかで明るい雰囲気に包まれる。 チェイス室長とのなんてことない会話を楽しんでいると、後半にいくにつれてさわさわ手や髪の毛を魔力が触ってくるわけだけど、特に害はないっていうかそこまで気にならない程度だったんだ。 まぁ本人だって魔力セクハラがバレてるなんて思っちゃいねぇだろうし、ろくろく娼館にも行ってなさそうだし、物理的に何かされるわけでもない。チェイス室長と過ごす時間は基本的に楽しかったから、こっちもそれくらい我慢してやろうと思ってたんだよな。 それが、チェイス室長が個人依頼を持ち込むようになって半年がたった頃。 何がきっかけだったのか……ああ、その時頼まれてた魔道具の修理がちょっと厄介な代物で、内部構造を見てみるかって話になったんだ。開けるのにもコツがいるヤツだったから、申し訳ないけどチェイス室長にちょっと蓋を持ってて貰ったんだよな。 そうなりゃ自然と距離も近くなる。 至近距離から無視しようがないほどの視線を感じて、チェイス室長を見上げたんだ。 あの人ときたら魔道具そっちのけで俺をじっと凝視してて。なんだかいつもとは違う空気に、俺はすぐに目を逸らした。なのに、視線は相変わらず痛いほど突き刺さってくる。 ふわっと、優しい魔力が俺を包み込んだ。 さらにはまるであの人の手が俺の頬に添えられたみたいな気がして息をのんだ瞬間、唇に僅かに温度を感じる。この感触にはさすがの俺もうろたえた。 どう考えてもキスされてる。魔力で。 その感覚が完全に感じられるのに、そんなことを仕掛けてくる本人はそんなことをおくびにも出さず、俺と目が合うと微笑んでみせる。 どこか切なそうな表情に見入ってしまった俺の唇を割って魔力が入り込んできて。 じっと見られているのに、その本人から口づけを受けているような感覚に、一気に羞恥が襲ってきて俺は思わずへたり込んだ。

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