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第6話 目を覚ませ、オレ!

なのに、チェイス室長の魔力は触られると優しい、穏やかな気持ちになれるんだ。 それだけでこの人が結構いい人なんだってことくらい分かる。 たとえ悪意なんてなくても、膨大な魔力ってのはそれだけで魔力を体で感じ取るタイプのオレには負荷がキツくて、触れると魔力酔いすることも多かった。 それに耐えられなくて結局は魔術師の道を諦めたオレだけど、チェイス室長から発せられる魔力は普通の魔術師なんかとは比べ物にならないほど強大なのに、不思議と癒されるような心地良さで。 それって多分、オレと魔力の相性がいいってことなんだと思う。 オレの髪や頬を触っている時も、大半は猫でもモフってるかのような、慈しみを感じる柔らかでふんわりとした感触がある。それは陽だまりみたいに心地よくて、うっかりすると微睡んでしまいそうな、幸せな時間だった。 オレの髪はオレンジのふわふわ猫っ毛だから、この人にはオレが猫に見えてるんじゃないかと思ったりしたこともあったっけ。 けど回を重ねるうちに、ふとした拍子にまるで肌を確かめるかのように触ってくることが増えてきたんだ。 その魔力は明らかに艶めかしい欲を含んでいた。 触れられれば触れられるほど恥ずかしくて、ゾクゾクして、なのに気持ちよくて、どうしたらいいのか分からなくなる。いたたまれない気持ちになるのに、嫌じゃなかった。 それだけに俺は困っていた。 そりゃもうめちゃくちゃに困っていた。 なんせチェイス室長から何か言われたわけでもなければ、表面上はそれらしい接触もない。 魔力で触ってくるったって、そこに恋愛感情があるのかないのかなんてオレに分かる筈もない。欲と恋愛感情はイコールではないことくらい、恋愛経験なんかないに等しいオレだってわかってる。 そっと唇を触ってみる。 もうチェイス室長の魔力の残滓もない。 でも、心臓だけは思い出したみたいにまたバクバクと激しく打ち始めてしまった。息苦しくなったオレは心臓のあたりをぎゅっと抑えて、なんとか息を吸い込みながら考える。 チェイス室長がオレのことを好き、って可能性はあるのかな……。 慌てて頭を振った。 ないない。 あるわけねえだろ。目を覚ませ、オレ! あるならとっくの昔に何かそれらしいこと言ってくる筈じゃねえか。 そもそもチェイス室長はあの若さで王宮魔術室の最高位をぶんどった超有名人だぞ? 恋人はいない、長続きしないなんて言ってたけど、有名人で金持ってて顔も悪くない、優しくて性格だっていいんだ。あの人が本気出せば大抵のお嬢さんは瞬殺だろう。

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