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第22話 漢気見せてみろってんだ
「すまない……」
「だから、謝って欲しいんじゃなくて、ちゃんとオレの話を聞いてくれって言ってんの」
「……」
少しの間をおいて、チェイス室長の頭がこくりと縦に動いた。やっと話を聞く気になったか。
意外と面倒な男だな、コイツ。
「あのさぁオレは、これは不幸なめぐりあわせでさ、ある意味事故みたいなモンだと思ってるんだよ、基本的に」
「事故……?」
「だってさ、オレが魔力を体で感じるみたいな特殊体質じゃなかったら、チェイス室長が魔力でどれだけセクハラしようが分かんないんだよ、本当は」
「あ、ああ、確かにそれはそうなのかも知れない」
「で、もっと言えば、チェイス室長の魔力や術の力がそんなにも強くなかったら、多分あんな風に繊細に触ってくるとかできないんだ」
チェイス室長は驚いた顔をしているけど、これは本当だ。オレの長年の経験から言って間違いない。
「今まで魔力であんな風に緻密に動いてるのなんか見たことないから、チェイス室長の能力の高さが影響してると思う。つまりオレとチェイス室長じゃなかったら、本当はこんな問題は起こりようがなかったんだよ」
「しかし私はついさっき、自身の魔力がミジェに影響を与えているのを理解しながら、妄想を止められなかった。許されざるべきことをした自覚はある」
「脳内のことまで普通は責められねぇだろ。そもそも、許すか許さねぇか決めるのは、触られまくった被害者のオレなんじゃねえの?」
ハッとした顔で俺を凝視したチェイス室長は、「その通りだ」と同意する。
「チェイス室長、さっきさ」
そこまで言って、オレの喉は急に詰まった。自ら口に出すのはやっぱりちょっと恥ずかしい。さっきチェイス室長、レンジョウを抱いて、って言ってたよな? レンジョウって、恋情だよな? オレの顔見たさに通っていたって……言ったよな?
「さっきさ……オレの事、好きって言った?」
ぴくっとチェイス室長の肩が動く。次いで、さっと顔が赤くなった。
「すまない、こんな十も年が離れた男に惚れられても困るだろうとわかってはいたのだが」
「だからさ、勝手に俺の気持ちを想像して自己完結するのやめてくれない?」
せっかく嬉しかったのに。
「だいたいなんなんだよ。オレのこと好きだって言うんなら、簡単に二度と来ないとか言わないで欲しいんだけど」
「しかし」
「しかし、じゃねーよ。あんた仮にも稀代の魔術師って言われてんだろ? 自分の魔力くらい、制御してみせるって言えねぇのかよ。ちったぁ漢気みせてみろってんだ」
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