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第23話 あの時言えてたら
チェイス室長は驚いたみたいにオレを見てる。でも、本心だった。
だって好きだなんて言いながら、同時に二度と会わないって宣言するなんて、結構酷いと思うんだけど。そんなのこっちの気持ちの方が整理できないに決まってるじゃないか。
その整理できない気持ちのまま、オレはポツポツと頭に浮かんだままを口にした。
「そりゃあ、あんな風にエロく触られるのは困るけど、オレ……あんたの陽だまりみたいな魔力は好きなんだ」
ホッとして、本当に陽だまりの猫みたいに微睡みたくなってしまう。あの気持ちいい魔力に二度と触れないなんて、それはやっぱり嫌だった。
「オレの魔道具すげぇ褒めてくれるし、あんたが話してくれることは何だって面白いんだよ。飯とか酒とか持ってきてくれるのだって、いっつも楽しみだったのに」
あれも全部なくなるってことだろ? そう考えたらなんかもう悲しくなってきて、オレの視線はテーブルの上に所在なく置かれた自分の手に固定される。俯くオレの髪に、優しい魔力が降りてきた。
「ミジェ……ミジェの言う通りだ」
頭を撫でられたかと思うと、ふわりと体が暖かい陽だまりみたいな魔力に包まれる。
いつもの、柔らかい安心できる魔力。
けど、その感覚はほんの一瞬で、まるで夢だったみたいに消え去ってしまった。目を上げると、チェイス室長が俺をまっすぐに見ている。
「確かに独りよがりな考えだった。この工房に胸を張って出入りできるよう、平時の魔力を制御するすべを全力で見つけるよ」
「ホント!?」
「ああ、任せてくれ。魔力が制御できるようになったら、またここへ来てもいいだろうか」
チェイス室長が真剣な表情でそう言ってくれたから、オレはすっかり嬉しくなってしまった。
「バカだなぁ。チェイス室長は感じとれないんだから制御出来てるかどうか分かんないじゃん。次もちゃんと来てよ。オレが判定してやるからさ」
目いっぱいの笑顔で軽口をたたいたら、チェイス室長は顔を赤くしてやっと少しだけ笑ってくれた。
「ありがとう。判定しがいがあるくらいにはなっておくよ」
精一杯努力する、と言いおいてチェイス室長は帰っていった。
***
あれから二週間、今日はいよいよ久しぶりにチェイス室長がオレの工房にくる日だ。
チェイス室長、少しは魔力が制御できるようなったかなぁ。あれ以来会ってないから、すごく楽しみだ。
あの日は結構酒も入ってたし色々あって混乱してたからなんか有耶無耶になっちゃったけど……チェイス室長がオレのこと好きでいてくれたってせっかく分かったのに、オレ、なんの返事もしてなかった。
あの時オレも好きだって言えてたら、今頃ちゃんと付き合えてたのかな。
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