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第24話 あんな事、言わなきゃよかった

確かにチェイス室長の魔力セクハラをなんとかうまくやめさせたいとは思ってたけど、でもそれってオレのこと好きかどうかも分かんないのに、合意なく触られるのが困るだけで。 こ、恋人同士になって、双方合意のイチャイチャなら別に問題はないっていうか……。 そこまで考えて、オレは首まで真っ赤になった。 なに考えてんだよオレ……!!! すっかり熱くなった頬を自慢の魔道具で風を送って冷やしていたら、ちりん、ちりん、とドアベルが鳴る。チェイス室長が来る時間だった。 「は、はい!」 ドアを開けようと小走りで工房の玄関に向かうと、いきなりドアが勢いよく開く。 「ちわーっす、久しぶり!」 「え、ラ、ライール!?」 「チェイス室長じゃなくて悪いねー」 軽~い調子でオレの工房の玄関のドアを開けたのは、魔術室の若手の魔術師、ライールだった。チェイス室長が来るようになる前は、よくこのライールが注文とか出来上がった魔道具の受け取りとかに来てくれてたんだよな。 え。ていうか、なんでチェイス室長じゃないの……? 「そんな残念そうな顔すんなって。チェイス室長は今頃スヤスヤおねんね中だよ」 「別に残念ってワケじゃ……って、おねんね中? どういうこと?」 「チェイス室長、自分が行くって言って聞かないからさぁ、魔術室のみんなで催眠の魔術重ねがけして強制的に眠らせてきた」 「怖っ! なんでまた、そんな」 「あの人このところ全然寝てないからさぁ。祭りの準備が佳境に入っててただでさえ忙しいのに、仕事終わると鬼気迫る勢いでなんかよく分かんない文献あさってんだよ」 オレは青くなった。それってまさか。 「ちょっとは休めってみんな言うんだけどさぁ、『私の今後の人生がかかっているんだ』とかワケ分かんないこと言っちゃって、書庫の中に籠ってんの。家に帰ってるかも怪しいもんだね」 ひええ、そんなことになっちゃってんの!? やべぇ。稀代の魔術師の『精一杯努力する』のレベル、オレの予想を遥かに超えてる。 「青白い顔して目の下に巨大なクマ飼っちゃってさぁ、そろそろ黙ってらんなくなったんさ。あの人、魔術耐性もバリ高だから苦労したよー。でも今は超強力に催眠が効いてるはずだから、明日の朝まで目覚めないんじゃねーかな」 「な、なんか大変そうだね」 「ま、あと十日程度の辛抱っしょ。来週頭には祭りが始まるし」 そういえばチェイス室長が言ってたっけ。年々祭りが大きく派手になってきて、今年は各国の要人が来るから堅固の魔術やらもてなすための魔術の構築が大変だって。 「そんなワケだからさ、用があるなら祭りが終わるまでは俺が来るわ。なんか伝言あったら伝えるからさ」 「う、うん。無理しないでって伝えて……」 チェイス室長の体が本気で心配になってきた。あんな事、言わなきゃよかった……。

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