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第25話 少しでいいから役に立ちたい
出来上がっていた魔道具を受け取ったら、ライールはあっという間に帰ってしまった。
ただでさえ忙しいのに、チェイス室長を強制的に眠らせた関係上、代行できる部分は魔術室のメンバーで手分けしてやろうとしているらしい。
「まぁ、室長の代わりにできることなんて結局少ないんだけさぁ、ま、ちょっとだけでもね」
なんて、ライールは笑いながら帰っていったけど、オレはいろんな意味で罪悪感に苛まれていた。
チェイス室長の忙しさも考えずオレがあんなこと言っちゃったばかりに、チェイス室長の休息の時間や体力を根こそぎ奪ってしまった。しかも、そのあおりを食って魔術室のメンバーにまで迷惑をかけてしまっている。
申し訳なくてたまらなくて、オレは工房の中をうろうろと熊のように歩き回った。
少しでいいから役に立ちたい。
チェイス室長と魔術室の人達の役に立つものを何か作れないだろうか。
オレは一生懸命に考える。みんなの仕事を楽にできるか、疲れた心や体を癒せるものがいいかも知れない。お詫びの気持ちを形にして、魔術室を訪ねよう。
そしてチェイス室長にもちゃんと謝って、休息をとって祭の準備に集中して欲しいって、伝えなくちゃ。
それからオレは必死に頑張った。
構想さえ固まってしまえば、以前開発したものを再利用できるから組み上げるのはなんとかなる。
出来上がったのは手のひらサイズの小さな魔道具。小さなポッチを押すと、魔力に反応してその人の全身を疲労回復の魔術が覆ってくれるという癒しアイテムだ。
オレが使えるくらいなんだから、魔術師の人達は疲労回復の魔術なんて簡単に使えるんだけど、この魔道具なら魔力の消費もないし、癒しの副次効果もある。
癒し効果があるって噂の香草の安らぐ香りがほのかに流れて、ぽかぽかとひだまりみたいな暖かさが全身を包んでくれる。オレがチェイス室長の魔力から感じる心地よさを再現したらこうなった。
なので自分で使うのは多分恥ずかしいと思う。自分用には作れないのが惜しい。
しかも手のひらサイズのコンパクトさだから、ちょっとした休憩中に椅子に座ったままでも使えるし、仮眠室があるって言ってたから、ベッドに横になっても使える。
一心不乱に作業して、組みあがった時には翌日の夜も遅くになっていた。
過去最速。やればできるじゃん、オレ。
とはいえ夕べは徹夜だったし、飯もろくに食ってない。でも、出来栄えには満足だ。明日魔術室を訪ねて、チェイス室長に渡してもらおう。それで、ちゃんと謝るんだ……。
疲労困憊で、そんなことを考えながらベッドにダイブした途端、玄関の呼び鈴がなった。
誰だよ、こんな時間に。
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